東京・有楽町駅前の東京交通会館には、各地の名産品を集めたアンテナショップが連なり、多くの人でにぎわっています。このビルの8階に20年あまりで月の訪問者が300倍超に跳ね上がった施設があります。NPO法人「ふるさと回帰支援センター」です。43都道府県と1政令指定市の窓口があり、「移住」に関する様々な相談に乗ってもらうことができます。移住の人気はコロナ禍を経ても変わらぬままだとか。背景に何があるのか、これから移住をめざす人の心構えは何か、理事長の高橋公(ひろし)さん(77)に聞きました。

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移住の動向について語る高橋公理事長=東京都千代田区のふるさと回帰支援センター、高木文子撮影

 ――センターは移住をはじめとして、地方暮らしを検討している人を支援してきました。これまでの経緯と現状を教えてください。

 「2002年にセンターを設立したころは、移住の相談は月20~30件でした。ところが、24年は6500件を超えた月もあった。移住のニーズは底堅いです」

地方にも「仕事や活躍の場」

 ――ニーズが高まった背景に何がありますか?

 「団塊世代の私が55年前にふるさとの福島から東京に出たころは、いい学校に入って、まじめに働いたらこうなれると、明るい未来を思い描くことができた。東京には希望があった」

 「ところが、バブルの崩壊以降は、貧富の格差や都市と地方の格差が拡大しています。東京は一極集中が進んで競争が厳しくなっていて、努力しても成功するのはなかなか難しい。一方で、地方は人口が減少していて、その分だけ仕事や活躍する場があります」

甲府盆地を見渡す景色=2024年12月18日、山梨県北杜市、棟形祐水撮影

 ――相談が増えたのはいつごろですか?

 「トレンドが変わったのは14年ごろ。政府が移住促進などを目標にする『地方創生』を打ち出して、補正予算を組むと、15年からセンターに窓口を置く自治体が急増しました」

 「相談件数も15年に2万件を超え、19年に4万9千件になりました。コロナ禍の20年は前年の4分の3に減りましたが、翌年にはコロナ前の水準に戻り、さらに23年は5万9千件まで伸びました。コロナ禍が落ち着いたことで、対面の移住セミナーも増えています」

 ――移住に関心を持つ世代のすそ野も広がっているのですか?

 「02年にセンターを立ち上げたのは、定年を迎える団塊世代の地方暮らしを後押しするのが狙いでした。それが、いまではセンターを利用する人の7割が40代以下です。テレワークなどが定着して、職場には週に1回顔を出せばいいとか、働き方が変わってきました」

長野県への移住などの相談に応じる相談員=東京都千代田区のふるさと回帰支援センター、高木文子撮影

綿密なシミュレーションを

 ――実際に移住を考える人たちが、気をつけなくてはいけないことは何でしょうか?

 「憧れだけで移住を成功させ…

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