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みちのく記念病院=2025年2月14日、青森県八戸市、江湖良二撮影

 青森県八戸市の「みちのく記念病院」で入院患者の男(59)が別の患者(当時73)を殺害した事件を隠蔽(いんぺい)したとして、同院の元院長ら医師2人が逮捕された。当時の院長や主治医が隠蔽(いんぺい)したとされる病院内で起きた殺人事件とはどのようなものだったのか。

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 青森地裁の確定判決によると、殺人罪に問われた男はアルコール依存症などの治療のために2022年7月に入院。他の入院患者との間でトラブルを繰り返し、両手をベッドの柵にひもで縛り付けられることが何度もあった。抑制されることなどに耐えられなくなり、男は「人を殺害すれば警察に逮捕され、ただちに退院できる」と考えるようになった。

 23年2月に別の病室に移った男は、隣のベッドにいた、体が不自由そうな男性を襲うことに決めた。翌3月12日、男性の目に歯ブラシの柄を突き刺すなどして殺害。男性の死因は、頭蓋(ずがい)内損傷と失血だった。

 昨年7月、男は青森地裁で懲役17年の実刑判決を受け、その後刑が確定した。

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 事件の現場となった「みちのく記念病院」に10年以上通院している八戸市内の40代男性は14日、同院を訪れて元院長らの逮捕を知った。逮捕された主治医が担当医だったといい、「毎月診察してもらっていたが、薬の種類の変更など、こちらの思いを尊重して柔軟に対応してくれる医師だった。悪い印象は特になかった」と話した。

 男性の家族も昨秋から同院に入院しているが、病院スタッフに異常を感じたことはなかったという。

 同病院は、1988年の創業。東北新幹線が止まるJR八戸駅から東に約6キロ離れた住宅街にある。

 厚生労働省のサイト「医療情報ネット」によると、昨年4月時点で病床は約410床あり、このうち約270床を精神病床が占めている。一般病床は60床、療養病床は約80床。非常勤も含めた医師は約20人、看護師は約80人で、計約110人が働く。

 14日に犯人隠避容疑で逮捕された石山隆容疑者(61)は2023年8月まで院長だった一方、同院を運営する医療法人「杏林会」(東京都目黒区)の理事長を現在も務める。

 民間信用調査会社によると、杏林会は、同院を含む病院5カ所のほか、介護老人保健施設など32カ所を東京や東北地方を中心に運営(昨年10月時点)。同年3月期の売り上げは150億円と推定され、近年は増加傾向にあった。

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