元復興事務次官の岡本全勝さん

 石破政権肝いりの「防災庁」新設へ向け、検討が本格化している。複合化・激甚化する災害に平時から備え、緊急対応と復興支援の要となる新組織には、どのような体制が求められるのか。東日本大震災の復興に長年携わり「ミスター復興」の異名を持つ岡本全勝・元復興事務次官に、課題を聞いた。

窓口の一本化と司令塔機能を

 ――石破内閣は2026年度中の防災庁設置を掲げ、制度設計の議論が本格化しています。どのような組織が求められますか。

 「災害対応は大きく3段階に分かれます。被害想定や防災計画を作る『事前防災』、発生後の救急や避難所運営などの『緊急対応』、そして、インフラ建設や産業再生といった『復旧・復興』です」

 「国で言えば現在、緊急対応までは内閣府防災担当が担っています。しかし定員は約110人で、統括官(局長級)も1人しかおらず、予算も限界があった。専任大臣を置く独立組織として職員を増やせば、防災対策の立案も発災時の初動・応急対応も充実するでしょう」

 「また、復旧・復興の支援は現在、道路は国土交通省、学校は文部科学省、医療機関は厚生労働省などと所管が分かれています。東日本大震災では復興庁が一元的に窓口を担い、被災地の要望にワンストップで対応しましたが、一般災害でもこうした体制が求められている。防災庁に期待される大きな役割です」

 「現在の内閣府防災と復興庁、そして東京電力福島第一原発事故の被災者支援部門を統合し、各統括官の下で役割を分担するのが、組織統制上もよいと思います」

 ――政府は従来、組織の肥大化を招くとして防災庁構想には否定的でした。復興庁も期限付きの組織です。石破政権は防災庁構想を先取りする形で25年度に内閣府防災の定員を倍増すると決め、新年度予算案でも当初予算ベースで倍増となる約146億円を計上しています。現在の内閣府防災の拡充では不十分なのでしょうか。

 「重要なのは、何よりも司令…

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