人口100万人以上の大都市で唯一ミニシアターがないさいたま市に来春、ミニシアターができる。名前は「OttO(オット)」。「東京のベッドタウンで何もない」「ダさいたま」と揶揄(やゆ)されがちな埼玉にあって、子どもが父親を呼ぶような、気軽な気持ちで立ち寄れる地域の財産にしたい――。そんな思いが込められている。
大宮駅西口から南へ10分ほどの住宅街。70坪弱の土地で5階建ての建物の工事が着々と進む。1階はカフェ、2階が50席のミニシアターとなるが、3~5階は計25室のシェアハウスだ。
「近所の人がふらりと立ち寄れる映画館をつくりたい」。仕掛け人の今井健太さん(55)が、そんなコンセプトを思いついたのは5年前だった。
区画整理事業で義父が所有するアパートを建て替える際、計画を任された。当初は、管理が楽で確実に収益が見込める駐車場にしようと思った。だが、ターミナル駅からアクセスが良く、人も多く集まる場所。「何か面白いことはできないか」と考え直し、映画館にしようと決めた。
仕事はビルなどの空調設備の施工で、映画とは無関係。映画マニアでもない。それでも、なぜかその時、当時5歳だった息子の千尋くん(11)が街の映画館に「ただいま!」と帰ってくる光景が思い浮かび、頭から離れなくなった。
■「住める映画館」も付加価値…