(16日、第106回全国高校野球選手権大会 青森山田5―0石橋)

 「ヤマダのドカベン」と呼びたくなる、左のスラッガーがいる。青森山田の4番、原田純希(あつき)選手(3年)だ。

 身長170㌢、体重97㌔。野球マンガ『ドカベン』の山田太郎は175㌢、85㌔。その主人公を圧縮して、筋肉のよろいで固めたような強打者だ。

 破壊力を、いきなり一回に発揮した。2死二塁、甘く入った直球を振り抜き、バックスクリーン右にたたき込んだ。先制の2点本塁打で、がっちり主導権を握った。

 「風に乗って、飛んでくれました。甲子園でホームランを打つのは、子どものころからの夢。うれしかったです」

 驚くべきは、スイングスピードだ。155㌔。青森のある強豪校のコーチによると、高校生の平均は130㌔、甲子園に出場する打者が140㌔。そのレベルをはるかに超えている。

 「速く振ることで、球を長く見ることができて、変化球も見極められる」と自負する。

 そして、フルスイングでとらえた瞬間、バットを下向きに回転させる。

 「球にバックスピンをかけて、遠くに飛ばす。打球が伸びれば、本塁打になります」と、さらりと言う。

 特大アーチで甲子園をどよめかせた。まるで、マンガの一場面のようだった。「自信を持って、次の試合にのぞめます」

 ちなみに、本人は『ドカベン』を読んだことがなく、山田太郎のことも「知らない」という。それでいい。彼が、この夏の主人公になればいいのだ。(渡部耕平)

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