2024年は辰年でした。奈良盆地には、豊かさのシンボルである竜にまつわる伝承が、いくつも残っています。2025年は巳年です。今回はそんな竜神や大蛇の説話について、奈良県大淀町教育委員会学芸員の松田度さんに紹介していただきます。

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 2024年の干支は辰年でした。辰は大蛇のことでオロチの古称があります。のちに大陸由来の道教・密教思想と混ざり合い、オロチは竜王(竜神)と呼ばれるようになります。

 オロチは、山中の水源地(池)に棲み、空に浮かんで雷光を発し、雨を降らせると信じられ、夏の日照りが続いた時は、オロチに雨を祈る「雨乞い」がおこなわれてきました。雷は人知を超えた「神鳴り」。雨とともに空気中の窒素を土中へもたらし、稲穂の生育を助けてくれる「稲妻」でもあります。

 豊穣のシンボル・オロチ(竜)をまつる民俗や説話が、奈良県内各地に伝わっています。なかでもよく知られているのが「ヤマトの大蛇」。大和盆地に大蛇がいて、東の三輪山(桜井市)がとぐろを巻いたオロチの頭。西の二上山麓の長尾神社(葛城市)がオロチの尾にあたる。そんな伝承です。

大神神社では

 これについて、大和盆地に暮…

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