佐々江賢一郎・元駐米大使の視点(下)
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記が、軍事協力を柱とする包括的戦略パートナーシップ条約に署名しました。複雑化する北東アジアの安全保障環境に日本はどう向き合うべきか。外務次官や駐米大使を務めた佐々江賢一郎・日本国際問題研究所理事長は「これから10年単位で、各国が置かれた戦略的な地位は変わっていく」と語ります。
- 【(上)はこちらから】ロ朝条約、プーチン氏を動かした不信の「連鎖と増幅」 佐々江元大使
――中国はロシアと北朝鮮の接近を静観しているように見えます。
中国の北朝鮮に対する影響力は、ロシアよりも圧倒的に強いと思います。ただ、今の状況では北朝鮮を必要とする度合いは、中国より、ロシアの方が強いでしょう。だから、ロシアとの関係を格上げしたわけです。北朝鮮はスイングすることにより、中ロを競わせることも可能でしょう。
中国は、北朝鮮とロシアが戦略的関係を深めることを内心歓迎はしていないと思います。中国は、日米欧諸国から、ロシア、北朝鮮と並んで「悪の枢軸」の一員とみられることは得策でもなく、自制もしているでしょう。しかし、米中関係が悪化していけば、この状況は変化することもありえます。
――ロシアと北朝鮮は、中国との軍事協力を実現させたいのではないですか。
これから、ロシアと北朝鮮が…