俳優の山田昌(やまだ・まさ)さんが6月に94歳で世を去った。名古屋の夫婦がまな娘の結婚を巡って騒動を繰り広げる「名古屋嫁入り物語」、名古屋の下町のおばあちゃんたちが難事件を解決する「やっとかめ探偵団」など、テレビドラマや舞台で名古屋弁の魅力を広めた功労者だった。
- 東海を愛し、東海に愛された山田昌さん 夫のアマチンさんと二人三脚
名古屋弁はふるさとの言葉ではない。愛知県の知多半島にある常滑市の出身で、夫で俳優の天野鎮雄さんから学んだ自己流だ。本人は「放送用名古屋弁山田流家元」と名乗っていた。
3歳で母を亡くし…演技に託した理想像
戦後間もない1949年に誕生したNHK名古屋放送劇団に入り、テレビドラマが生放送だった草創期から活躍した。81年のNHK銀河テレビ小説「祈願満願」で、初めて全国放送のドラマの主演を務めた。テレビドラマの世界は長く「標準語」しか使われなかったが、名古屋の大須商店街を舞台にしたこの作品は全編名古屋弁。呉服店を開こうと奮闘する仕立屋さんで、柳生博さん演じる夫をたぶらかしたお金持ちの女性に「この人を買っていただきます。1千万。びた一文負けませんよ!」と啖呵(たんか)を切って強い印象を残した。
その後、今村昌平監督の映画…