(30日、第69回全国高校軟式野球選手権大会決勝 中京2―0仙台商)

 安打を許さず迎えた五回、連打と犠打で1死二、三塁のピンチ。中京のエース川口拓海投手(3年)は冷静だった。「一個ずつアウトを取れば問題ない」。投前ゴロをつかむと本塁送球でアウトを奪い、無失点で切り抜ける。直球とスライダー、ツーシームを操って仙台商を被安打3に封じ、完封で大会3連覇を飾った。

 昨年の決勝も出場した。「優勝の次の日から重圧を感じました」。早くも次回大会での3連覇のプレッシャーがのしかかっていた。投手と野手を兼ねていたが、昨秋、投手専念を平中亮太監督に申し出た。「中途半端では優勝できないと思いました」

 練習漬けの日々を送ってきた。平日は夕方から夜10時ごろまで、試合中心となる土日祝日も朝8時ごろから夕方ごろまでひたすら技術を磨いた。

 中学時代は硬式野球のクラブチームに所属していた。高校でも硬式を続けるつもりだったが、中3の時に平中亮太監督に言われた。「一緒に日本一になろう」

 「そんなに目立った選手ではなかったのに声をかけてくれて。期待に応えたい」。入学し、平中監督を信じて猛練習を続けた。「日本一だけが目標でした」

 当初はエースの気負いもあった。「自分ひとりで投げ切らなきゃいけない」。だが徐々に変わった。野手やほかの投手ら「全員で野球をやろうと思うようになってから楽になりました」

 その一人が、準々決勝で完投勝ちした背番号10の清水楓真投手(3年)だ。「ふたりでずっと頑張ってきた。ピンチでも切り抜けてくれると信じていました」

 平中監督は「1年間任せてきたエースの意地とプライド。粘り強く九回までいい投球を続けてくれた」とたたえた。

 来年は前人未到の4連覇に後輩たちが挑む。川口投手はよどみなく語った。「気負わず、一戦一戦、一球一球を大切にすれば、必ず報われると思います」(高原敦)

応援部や吹奏楽部、チアリーダー部が全力応援

 一塁側の中京スタンドは保護者のほか、応援部や吹奏楽部、チアリーダー部の部員約50人が陣取って全力応援を続けた。

 28日朝に岐阜県瑞浪市の同校をバス2台に分乗して出発。準決勝と決勝の応援に臨んだ。

 攻撃の場面では、大太鼓やスーザフォンの音に合わせ、メガホンやポンポンを手に選手名を叫んで大声援を送った。

 吹奏楽部の宮島佑奈部長(3年)は「今までどれだけ努力をしてきたのか見てきました。それに見合う精いっぱいの応援をします」と話した。(高原敦)

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