世界への扉が一気に開ける受賞だ。スイスで開かれた第78回ロカルノ国際映画祭で16日、三宅唱監督の「旅と日々」が最高賞にあたる金豹(きんひょう)賞を受賞した。三宅監督は、国内において華々しい受賞歴があり、映画批評の大家も、戦前生まれの巨匠も賛辞を惜しまない俊英だ。今回のロカルノでの評価が海外での飛躍へとつながっていくのは間違いない。
- 三宅唱監督「旅と日々」がロカルノ映画祭最高賞 日本映画18年ぶり
1984年生まれの三宅監督が、鮮烈にデビューしたのは2010年代のはじめ。「やくたたず」(10年)や「Playback」(12年)を発表すると、コアな映画ファンが、モノクロで撮られたクールで厳格な映像に驚いた。その後しばらくは短編作品などの発表にとどまったが、初めて商業映画として撮った青春映画「きみの鳥はうたえる」で広く知られるようになり、辛口で知られる雑誌「映画芸術」は2018年公開作品でベストワンに選んだ。
このとき、世界的な映画批評家である蓮實重彦さんは「ユリイカ」誌上で、濱口竜介監督、小森はるか監督に加えて三宅監督の3人の名前を挙げ、「日本映画の第三の黄金時代を築く」と評価した。日本映画の黄金時代と言えば、1930年代や50年代が挙げられる。映画ファンは、山中貞雄や溝口健二、小津安二郎らが旺盛に作品を発表していた幸福な時代が再び訪れようとしているのかという興奮を覚えるとともに、若き3人の名前もしっかり記憶に刻んだのだった。
山田洋次監督もたたえる表現
三宅監督の活躍ぶりは勢いを…