佐渡鉱山の象徴的存在である「道遊の割戸」。人力で山頂から鉱脈を掘り進むうちに山が真っ二つになったような景観が残った。割れ目の深さは約74メートルで、幅は約30メートルに及ぶという=新潟県佐渡市
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記者コラム 「多事奏論」 オピニオン編集部記者・田玉恵美

 先週、世界文化遺産への登録をめざしている「佐渡島(さど)の金山」について、ユネスコの諮問機関イコモスの評価結果が公表された。

 最終的に世界遺産になれるかどうかは、来月開かれるユネスコの会合で議論されるが、これで世界遺産としての価値は基本的に認められたという。

 その報道を私は複雑な思いで聞いた。地元・新潟の元県職員などから、佐渡金山についての政府や自治体の説明はおかしいのではないか、という声が上がっているからだ。

 文化庁のホームページや、地元の佐渡市にある展示施設には「佐渡の金は世界でも流通」「オランダ人は大量の佐渡小判を入手」「17世紀における世界最大の金生産地」といった壮大な表現が並ぶ。

 地元メディアの報道によると、花角英世知事もパリに外遊した際、「17世紀前半には、世界全体の金の産出量の約10%を産出」などと各国の代表に売り込んだようだ。

 だが、こうした文言は歴史の専門家も聞いたことがないのだという。

 世界遺産にならんとする遺跡について、行政がそんな説明をするなんてことがあるのか。

 半信半疑で取材を始めると、話を聞きに行った研究者たちが一様に首をかしげた。

「佐渡は、鉱山の遺産としては…

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