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東海大菅生―日大三 八回裏日大三1死一、三塁、本間は右前適時打を放つ=神宮、吉本美奈子撮影
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(29日、第107回全国高校野球選手権西東京大会決勝 日大三8―4東海大菅生)

 九回表2死、打球はセンターを守る日大三の主将、本間律輝(3年)に向かって真っすぐ伸びてきた。グラブにおさめた瞬間、目元が熱くなる。そのまま、マウンドにできた歓喜の輪に向かって走っていった。

 本間は日大三を「甲子園をめざして集まってきたメンバー。勝たないといけないチーム」と言う。そんな強豪の主将を昨夏、西東京大会の決勝で早稲田実にサヨナラ負けをした後、任されることになった。

 選手としての実績は抜群だが、口数は多くない。「主将のタイプじゃないのに」。どうやってチームを引っ張っていくか、不安のほうが大きかった。

 「これまでのキャプテンたちを意識してしまうかもしれないけど、律輝は律輝らしい代にすればいいんじゃない」。アドバイスをくれたのは姉の彩香さん(28)、遥香さん(24)の2人だった。ともに日大三の吹奏楽部で主将を務めた。本間が日大三を選んだのも、2人の影響が大きかった。

 「言葉で言うのが得意じゃないなら、行動で見せるしかない」。そう考えると、覚悟が決まった。あと一歩のところで優勝旗を逃した悔しさを絶対に晴らす。厳しい冬場の練習にも率先して取り組んだ。

 迎えたこの日の決勝。本間は決意通りの活躍を見せる。

 三回裏2死二、三塁では中前へはじき返し、先制の2点を挙げる。1点リードされた直後の五回裏には左越えの二塁打を放ち、逆転。八回裏にも適時打で、貴重な追加点をあげた。「回せば絶対打ってくれる。頼もしかった」と三木有造監督は言う。

 点数を積み上げても、本間が表情を緩めることはなかった。アウトを一つずつとることに集中し、冷静さを保つよう、自分にも、仲間にも言い聞かせた。

 閉会式で、優勝旗をしっかりとつかんだ本間。「自分ができる最大を、プレーで見せることができた」。甲子園をかけた大舞台で、目指していた主将の姿を鮮やかに示してみせた。=神宮

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