高度経済成長にともなう道路網の充実で増え続けた街路樹。アスファルトの隙間に根を張り、都市に潤いを与えてきた木々が今、岐路に立っている。
- 街路樹、一つの市で7億円の資産価値も 維持費を上回る多様な恵み
名古屋市は維持管理に必要な具体的な費用をもとに検討を重ね、寿命を待たない、早めの撤去や更新(植え替え)を進めようとしている。
窮状を訴える課長補佐
市内の名城大学で6月、日本造園学会全国大会が開かれた。街路樹の課題や今後について考えるフォーラムで、研究者や樹木医らが耳を傾ける中、同市緑地維持課の戸子台和浩課長補佐は窮状を訴えた。
「名古屋市内には高木約9万3千本の43%が40年以上を経過し、大木化、老木化が進んでいます」
枯れ枝が落下して歩行者に当たってけがをさせる事故や、大きく育った枝が走行中のトラックに当たる事故が起こっているという。台風などを除いた事故件数は2004年から23年度までの5年間ごとに20件、42件、71件、129件と右肩上がりに増えている。
21年に策定した「街路樹再生なごやプラン」では、道路空間と調和し、地域に愛される街路樹にすると定めた。中でも、撤去を計画的に進めることを明記したのがポイントだという。
「満足に管理するだけの予算なかった」
本数の削減を急ぐ理由は維持管理などにかかる経費の抑制、平準化だ。街路樹が機能を失うまで使い続け、枯れたら更新を繰り返すという従来の方法に代わる、「予防保全型」だと説明する。一定年数を経過したものから計画的に植え替える方法だ。
名古屋市では1997年に約18億円あった維持管理予算が、行財政改革の一環で13年には8億円まで落ち込み、最近は回復傾向にはあるものの、11億円ほどだ。
大きく成長した木々の維持管理には多額の費用がかかる。戸子台さんは「街路樹には大きくなったら大きくなっただけの価値がある」としつつ、「なかなか満足に管理するだけの予算が確保できていなかった」と話す。
近年、人件費も上がり続け、100万円で維持管理できる本数は02年度の68本に対し、20年度は34本と半減した。
計算結果と今後の伐採計画
仮に150年間にかかる費用…