大阪シティバス(大阪市西区)の運転士だった60代の男性が勤務中のけがで運転業務ができなくなり、事務職での復職を拒まれて退職を余儀なくされたとして、同社に損害賠償と休職中の賃金など計約2400万円を求める訴訟を4日、大阪地裁に起こした。「できる仕事があったのに復職を拒んだのは信義則に反する」と訴えている。
訴状によると、男性は1990年に大阪市交通局のバスの運転士となり、18年の民営化後も運転業務を続けていた。
21年4月に営業所にバイクで出勤した際、地面のくぼみにたまったコンクリート片で前輪が滑って転倒。けがの後遺症で左肩の可動域が半分になり、労災認定を受けた。
事務職での復職を求めたが、会社側から運転士としての復職しかできないと回答されたという。
リハビリをしても「運転可能」とする診断書は出ず、会社側からバスの洗車や出入庫の際の旗振り業務を提示されたが、体の状態から難しいと考えて辞退。休職期間が過ぎて無給の状態になり、23年3月に自主退職した。
訴状で男性側は、同社では民営化前も含め、運転士から事務職に職種変更した例は10件ほどあるとし、自身への対応は「悪質な復職拒否だ」と主張している。男性は取材に「30年以上貢献してきたのに、運転できない体になったら切られた。労働者としての尊厳を訴えたい」と話した。
同社は取材に「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。