連載コラム 「彩々」 首都圏ニュースセンター長・宮嶋加菜子

このコラムは……

3人の記者が交代でつづるコラムです。身の周りで起きたことや取材の場で見聞きしたことを糸口に、いまの社会を読み解きます。多彩なテーマ、多様な視点をお楽しみください。

 6月初めの早朝、田植えが終わったばかりの長野県の実家の水田は、朝の光を浴びてきらきらしていた。まさに日本の原風景、と気楽に感動していると、コメ作りをしている兄(54)が一言。「そんな簡単なことじゃないんだに」

早朝の水田。田植えを終えた水面が太陽にきらきら輝いていた=2025年6月、長野県

 田んぼに水を引く水路の管理に土手の草刈り……。コメを作るには、水田を見ているだけでは分からない、大事で大変な作業がたくさんあるのだという。

 水がぴんと張られた田んぼの横には、U字溝の水路が整備され、いつも水が流れている。小さな頃から変わらない風景だが、この水はどこから来るのか、そういえば知らない。兄と軽トラックに乗って約10分、クマよけの鈴を鳴らしながら新緑の山に分け入っていくと、川の水音が聞こえてきた。標高約800メートル。ここが田んぼの水の源流だ。

山の中にある農業用水の源流。点検には、クマよけの鈴が必需品という=2025年6月1日、長野県

 実家の集落では、同じ農業用…

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