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【動画】限られたエリアながら独自の方言が残る静岡市の井川地区でお年寄りに話を聞いた=鳴澤大記者撮影

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現場へ! 全国方言サバイバル⑤

 静岡駅から車で2時間半の山間にある静岡市葵区井川。

 この集落に4年前から通うのは社会言語学者で静岡理工科大情報学部の谷口ジョイ教授(48)だ。井川弁を調べているという。

 井川弁はアクセントで単語の意味を変えない「無アクセント」、また動詞語頭のハ行を「パ行」で発音し、奈良時代の東国の言葉も残る。

 だが今や消滅寸前の状況だ。谷口教授は言う。

 「調査可能な高齢者のほぼ全員から聴取しましたが、残る話者は80代以上の一部です」

 一帯は山梨や長野方面からの移住先で、ダム建設があった1950年代以前は道が限られて周囲から隔絶。方言がいわば密封された状態にあった。

 ところがその後は人口が減り続け、世代間継承もなかったため、危機が早く訪れた。

 谷口教授と学生の調査に同行すると、訪ねたのは奥にある小河内(こごうち)地区。お年寄りの単語の発音を録音し、かつてあった金山の話も聞き取っていた。

 調査の目標は保存継承といい、これまで絵本を制作。今は紙芝居作りの準備を進めているという。

 東日本大震災があった福島にも方言の継承を願う研究者がいる。

 奥羽大講師の本多真史さん(47)。北関東と福島を結ぶ鉄路が沿線方言に与えた影響を3月に発行した「東北本線・常磐線グロットグラム」で明らかにした。

 福島の中通りを抜ける東北線と浜通りの常磐線では、それぞれ年代・地理別に単語の呼び方を調べた過去のデータが存在する。主体こそ違うが、それらと比較可能なかたちで2003年まで単独調査。震災後に改めてデータを洗い直し、今回公表した。

 本多さんは開通・電化の時期や単線の有無で影響に差が出たと結論。「利便性のいい東北線の方が共通語の伝わり方が活発で、方言の衰退が速い」と説明する。

 一方、調査した地域には震災の県外避難でコミュニティーが消えた場所もある。

 「福島の言語体系は二度と戻らない。資料は貴重な『写真』。地元にこういう方言があったんだよと、子どもたちに伝える材料にもなってほしい」

 今や親世代が「共通語」を自…

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