インタビューに応じる長崎県対馬市の比田勝尚喜市長=2024年5月24日、対馬市役所、榧場勇太撮影
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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場をめぐり、九州電力玄海原発がある佐賀県玄海町が5月10日、原発立地自治体では初めて、国の選定プロセスの第1段階となる「文献調査」に応じた。昨年9月に「受け入れない」と表明した長崎県対馬市の比田勝尚喜市長(69)に当時の判断や候補地選定のあり方を聞いた。

 ――今回の玄海町と同様に、対馬市でも昨年、地元の業界団体から「文献調査」の受け入れを求める請願が出され、議会が賛成多数で請願を採択しました。

 市議会は2007年に最終処分場の誘致に反対する議決をしている。私も、文献調査は以前からまったく考えていなかった。だから、請願が採択されたことは、まったく想定外だった。

 ――市長は昨年9月、「市民の分断を深めたくない」として、市民の合意形成が不十分であることを理由に、受け入れを拒否しました。分断はなぜ起きたのでしょうか。

 市民が本当に対馬の将来を案じたときの、考え方の違いだ。17年前に市議会が処分場誘致に反対した時との違いは、やはり人口減少問題などが進んだ。議会も島の将来を考えた上での請願採択だったと思う。一方で、最終処分場が来れば、観光産業、水産業には強い打撃になるという思いがある。それぞれの島を愛する市民の気持ちがこのような分断につながったと思う。

 ――対馬市の一般会計予算は約320億円。文献調査を受け入れれば国から交付金20億円がもらえます。次の段階に進めば、さらに70億円も入ってきます。

 正直に言うと、やはり交付金20億円は、のどから手が出るほど、もう本当にいただけるものなら、いただきたい財源だ。次の段階に踏み込めば、交付金70億円だけではないと思う。工事による経済効果もあるかもしれない。

 しかし、それをもらってしまったら、もう後戻りはできない。

 風評被害が出ると、大きな損…

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