【動画】桜が見頃を迎えた長崎・波佐見の大堤自然公園=日吉健吾、井手さゆり撮影
入院先の相部屋に、次々と患者が運ばれてくる。そこでは昨日まで元気だった人が口から血を吐いた。シーツやカーテンが赤く染まるのも見た。
「コロコロ人が死によった」。長崎県波佐見町の深澤勝さん(85)は、60歳を目前にC型肝炎を発症した。当然、自分も覚悟した。「どうせ死ぬとやけんが、世の中に何かひとつ、残さんば」
連載「桜ものがたり」一覧
桜の風景とともに思い出す大切な記憶。読者のみなさまから寄せて頂いた、桜の物語をお届けします。
子どもの頃、真夏にため池で泳ぎながら「ここに桜やモミジが咲きよったらおもしろか!」と考えていたことを思い出した。地元の友人たちに話すと、最初こそ止められたものの、意思が変わらないと知ると手を貸してくれることになった。
2003年、公園造りを始めた。自宅近くの約2ヘクタールの山を買い、中古の重機、2トントラック、チェーンソーをそろえた。雑木や竹を切り倒し、道をならした。人手や金銭に困った時は、友人たちが助けてくれた。
山は「大堤自然公園」と名づけ、山桜の苗木を植えた。福島・三春滝桜、岐阜・根尾谷淡墨桜、山形・伊佐沢の久保桜。妻と全国を巡る中で、山桜は千年を超えて生きることがあると知ったからだ。「自然には人が集まってくるけん」。ツバキやモミジなども植え、一年中楽しめる場所を目指した。隣の約1・5ヘクタールの山も購入した。
今も山に出かける。下草刈り、植え替え、12年前から始めたニホンミツバチの世話。近頃は、苗木を掘り返すイノシシやアナグマとの知恵比べが続く。
今年も山がピンク色に染まった。「人生、楽しか!」。整備できたのは約3割。理想までの道のりは、長い。