聴衆に支持を訴えるスウェーデン民主党のオーケソン党首=2018年、スウェーデン東部スンツバル、下司佳代子撮影

 移民や難民に寛容な「人道大国」スウェーデンの外国人受け入れ政策が厳しくなっています。背景には、極右集団を起源にもつスウェーデン民主党の躍進があります。スウェーデン政治外交史が専門の鈴木悠史さんによる寄稿です。

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 「移民はスウェーデンにとって有益でなければならない」

 2024年夏、右派の穏健党のクリステション首相らが新聞に寄稿した記事のタイトルだ。中道右派連合による現政府が進める移民・難民政策に通底する考え方といえる。

 22年の政権交代で誕生した現政府は、移民政策のパラダイムシフトを掲げ、外国人の受け入れを制限する政策を次々と実施している。前政権で年間5千人だった第三国定住のしくみで受け入れる難民の人数枠は900人へと引き下げられた。他にも難民が家族を呼び寄せる際の扶養要件の免除を廃止し、呼び寄せのハードルを上げた。一連の政策効果は明白だ。厳格化したスウェーデンでの庇護(ひご)申請が敬遠され、昨年の庇護申請者数は1万人を下回り、1996年以降で最少だった。

 「スウェーデンは人道大国だ」

 14年夏、当時のラインフェルト首相は演説でこう述べ、押し寄せるシリア難民に対して「心を開いてほしい」と国民に訴えた。翌年には16万人以上の庇護申請者が殺到し、人道的観点から人口比で欧州最大の約3万4千人の難民を受け入れた。

 この10年間での変化はなぜ起こったのだろうか。

 福祉国家スウェーデンでは経…

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