Smiley face
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「煙草(たばこ)を手に」=鈴木幹雄さん提供
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 半世紀にわたって多くがネガフィルムのまま保管されていた写真24点が、東京・神田のギャラリーに並んだ。本土復帰から間もない沖縄のハンセン病療養所の様子を伝える。苦悩しながらレンズを向けた20代の若者と、被写体となった入所者の関係性も、写真が訴えかけている。

 撮影したのは、福島県会津若松市の陶芸家鈴木幹雄さん(76)。1974年12月から約1年、沖縄県名護市の国立療養所沖縄愛楽園に泊まり込んで撮りためた。

 当時は20代半ば。言われるまま撮影する仕事に疑問を抱いてメディア関連の制作会社を辞める前、知人から「差別と偏見をただす写真を」と愛楽園を紹介された。

 退社後に四国で遍路巡りをしていた時、ハンセン病患者への差別を見聞きしたこともあり、意を決して沖縄へ渡った。

 だが当初は、入所者の後ろ姿や園の全景などしか撮れなかった。

 「自分の中に偏見はなかったと思うが、人の心に土足で上がるような気がして気が引けた」。当時の日記には「撮るべきではないのか。自分の弱さからか」「人間とは命とは生きがいとは」など、向き合い方に悩む姿が残る。

「これがライよ撮りなさい」

 火葬に立ち会った時、サングラス姿の入所者が声をかけてきた。

 「兄さんここにライ(ハンセ…

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