江戸時代前期に多摩川の水を取り入れ、全長43キロにわたって掘られた上水路、玉川上水。そんな水辺の緑道ではいまも、多くの生き物が共生している。
東京都国分寺市に住む関野吉晴さん(75)は、武蔵野美術大教授だった2016年から、上水沿いで自然観察会を始めた。学生たちと都市の自然に触れ、それまでの考え方が百八十度変わった。
南米から東アフリカまで、人類が発祥してから世界に拡散していった道のりを逆向きにたどった旅「グレートジャーニー」で知られる探検家は振り返る。「大自然とは対照的だけど、こんな都市の自然にいる、ごく普通の生き物が生態系全体を支えていることに気づいた」
だからこそ関野さんは焦りを隠さない。緑道を東西に分断する都道の計画が着々と進んでいるからだ。
■多摩の水物語
人々の喉をうるおし、緑をはぐくむ水。その豊かさの恩恵を受け、間近に自然を感じられるエリアが東京にはある。多摩における水事情の今昔をお伝えします。
都北多摩北部建設事務所によると、小平市で玉川上水と交差する長さ1・4キロの都道の原案は1963年に都市計画決定された。高度成長の時代を前に多摩地域の南北交通の渋滞緩和を目的とし、道路幅は36メートル。その用地として上水の緑道にある樹木と北側にあるクヌギやコナラの雑木林が伐採されることになる。
■皇居に匹敵する野鳥の楽園「…