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埼玉西武ライオンズの田村伊知郎=5月
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 2023年のオフ、埼玉西武ライオンズの右腕・田村伊知郎は公の場で言い続けた。

 「守護神をめざします」

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 最終回を抑え、勝利を決める瞬間をマウンドで迎える絶対的な存在。救援陣の誰もがその座をめざす。

 昨季は24試合登板で防御率1.52。勝ちパターンの一角を任され、背番号は40から20に変わった。かつて、チームの抑えとして君臨した豊田清投手コーチが背負った番号でもある。

 「敗戦処理が長かった。ここで手を挙げられない自分は嫌だった。言い訳できないようにしようと」

 「守護神宣言」は、30歳になる2024年シーズンを前にした覚悟だった。

 それなのに、今季は開幕前に2軍行きを告げられた。

 オープン戦は3試合で防御率9.00。最終戦の後、ロッカーの荷物を段ボール箱にまとめ、足早に球場を後にした。

 「哀愁、漂いますよね」と田村が笑って振り返る。

 「あの日はやっぱり悔しかった。しばらく、なんでだろうって……」

 ただ、打ちひしがれていても、前には進めない。すぐに切り替えるすべは、毎日のように試合があるプロ生活で身につけてきた。

 「やることは変わらなかったですよ」と言った。

 1軍昇格は開幕から約2週間遅れた4月14日。5月22日のロッテ戦まで、中継ぎで9試合すべてを無失点に抑えた。

 渡辺久信監督代行が就いて初のホームゲームとなった5月31日の巨人戦では、3点をリードされた四回1死一、二塁でマウンドへ。相手の勢いを止めたい場面。ベンチは先発の高橋光成を降板させ、田村に託した。

 背番号20は、内角を突く速球で併殺打に打ち取ると、体を投げ出しながら右拳を強く振り、ほえた。

 田村が昇格した頃から、ずっとチーム状況は苦しい。その中で、任された仕事を全うしている。

 大差をつけられての敗戦処理でも、勝敗を分けるような登板でも、変わらない思いがあるという。

 「今日のマウンドが本当に…

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