A-stories 産後離婚②
長廣百合子さん(40)が、遥(よう)さん(47)の11回目のプロポーズを受け入れたのは29歳のときだった。
仕事が何より楽しく、生きがいだった。大学卒業後、大手人材会社の九州支社に就職。その後独立し、若手人材の育成のための事業を立ち上げた。「超」がつくほどのワーカホリックで、結婚や出産はキャリアの足かせになると思っていた。
だが遥さんの粘り強いアプローチに、「受け入れることで切り開かれる人生もあるのかも」と思い、結婚を決めた。
地域活性化のコンサルティング会社に勤めていた遥さんには離婚歴があり、「一家だんらん」する家庭をつくることが夢だった。
すぐに第1子を授かった。百合子さんは個人事業主なので、産休・育休を取ると、その間の収入は絶たれる。仕事を中断することや、出産への漠然とした不安がふくらんでいった。
「産後2カ月くらいで仕事始めようかな」
ある日、百合子さんがこうつぶやくと、遥さんは驚いた顔をして、諭すように言った。
「それは無理じゃない。体も心配だし、やめとこうよ」
その瞬間、百合子さんは誰も味方がいないような寂しさに襲われた。
「私の自由な想像の翼を奪わないでよ」。泣きながら怒りをぶつけた。
結婚してしばらくは、周囲が引くぐらい仲が良かったのに。この頃から、2人の間に不穏な空気が漂うようになった。
厚生労働省の調査によると、ひとり親になった女性の4割は子どもが0~2歳のときに離婚しており、5歳までを合わせると6割にのぼるという。日本に「産後離婚」が多い理由は……。
募る夫への不信感と妻の孤独感
2014年5月、長女が生ま…