レッツ・スタディー!英語編① 自己紹介から始めよう!
英語は学校で勉強したけれど、実際に使うのは自信がない――。そんな人は少なくありません。NMB48メンバーの青原和花(あおばらわか)さん(大学4年)、優花(ゆか)さん(高校3年)姉妹もそうだといいます。どうしたら英語を自分のものにできるのか。青原さん姉妹、追手門学院大学国際学部長の松宮新吾教授(英語教育学)と一緒に考える「レッツ・スタディー!」英語編を始めます。
【お題】海外のライブ会場で、英語で自己紹介してください
ここは海外のライブ会場です。お客さんに向けて、英語で自己紹介してください。
【青原和花さん】 I can warm everyone’s heart with my smile!
あおばら・わか 2004年、大阪府生まれ。22年、NMB48加入。23年のシングル「渚(なぎさ)サイコー!」、最新シングル「チューストライク」で歌唱メンバーに選ばれる。夢は「世界中に笑顔や希望を届けること」。愛称わかたん。
Hello! My name is Waka Aobara.
I’m a member of the Japanese idol group NMB48.
I’m 21 years old and from Osaka Prefecture.
My younger sister and I are in the same team, which is very rare and special!
I can warm everyone’s heart with my smile!
I’ll make you totally fall for me-fall head over heels for me – so please fall in love with me!
《本人による和訳》こんにちは! 私の名前は青原和花です。日本の女性アイドルグループ「NMB48」のメンバーです。大阪府出身、21歳です。姉妹で同じグループに所属しています。これはとても珍しいことなんですよ! 私は、笑顔でみんなの心を温かくすることができます! 今日は(観客の)あなたが夢中になってしまうような、恋に落ちてしまう感覚になるようなパフォーマンスをみせたいと思っています。どうぞ好きになってください!
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【青原優花さん】My special skill is …
あおばら・ゆか 2007年、大阪府生まれ。22年、NMB48加入。4月9日リリースのシングル「チューストライク」で歌唱メンバーに選ばれ、グループ初の「姉妹同時選抜入り」。夢は「マルチな活躍」。愛称ゆかたん。
Hello, everyone! My name is Yuka Aobara, but please call me Yukatan! I’m a Japanese idol in NMB48. There are two Aobara sisters in the group, and I’m the younger sister. My special skill is doing impressions of dogs! People say I’m a bit strange… but I don’t really understand why! I’m interested in English, so I listen to Western music once a day. I want to perform with NMB48 overseas someday. My dream is to become an idol who is loved by everyone and shines like the sun!
《本人による和訳》皆さん、こんにちは! ゆかたんこと青原優花です! 私は大阪の難波を拠点に活動しているNMB48のメンバーです。青原姉妹の妹です。特技は犬のモノマネです。変わっているとよく言われます……なぜなんでしょう。最近は英語に興味があり、一日に一度はお気に入りの洋楽を聴いています! いつかNMB48の一員として海外でライブをしたいです! 皆さんから愛される、太陽のようにキラキラした存在になるのが夢です!
【探究】ポイントは「聞き手の存在を感じながら」話すこと
松宮新吾さん お二人とも大変わかりやすく、ストレートにメッセージが伝わってくる素敵なあいさつでした。
青原和花さん・優花さん 本当ですか? それはよかったです!
松宮さん 一度、声に出して読んでみますか。
和花さん・優花さん (それぞれ読み上げる)
優花さん お姉ちゃん。笑顔が強みだというのに、真顔で読み上げてちゃダメじゃない。
和花さん 仕方ないでしょ。緊張するんだよ。
松宮さん なぜ緊張するんでしょうね?
和花さん・優花さん えっ?
私たちの英語も「World Englishes」(松宮さん)
松宮さん 私たちは、英語を母語とする一部の国や地域の人々の英語が「正しい」「特別な」英語だと考えてしまいがちです。「正しい」英語を正しく使わないと、となる。
和花さん 確かに「間違えないようにしよう」ということを最初に考えてしまいました。
松宮さん でも、それが英語への苦手意識を生んでいる面もあります。私たちをはじめ、世界中で英語を学び、使っている人々の多様な英語もまた、“World Englishes”として、等しく認められるべきものなのに。
まつみや・しんご 1956年生まれ。大阪府立高校教諭や大学教授などとして英語教育に40年以上携わる。専門は外国語教育や英語教育学。
和花さん “World Englishes”ですか!
松宮さん この連載では、英語を「自分のことば」とするために、中学校段階の英語を活用すれば、日常生活での会話をほぼカバーできることを体験的に学べたらと思います。
和花さん お願いします! 私の自己紹介、確かに話し言葉にしたら硬い印象ですかね。
松宮さん 「聞き手の存在を感じながら語る」ことがポイントになると思います。例えば妹がいることを紹介する場合、“Do you have any brothers or sisters? … Oh, you do?”(皆さんにはごきょうだいがいますか? へえ、そうなんですか!)のように、会場に問いかけ、やりとりすることで共感や一体感が生まれます。
和花さん なるほど! そうすればお客さんもリアクションをしやすいですね。
優花さん 私は特技の「犬のモノマネ」を自己紹介に入れてみました。迷ったんですが、私の個性をアピールしようと思って。
松宮さん 素晴らしいですね。インパクトありますよ! これも、客席の人たちを巻き込んでいく表現を考えてみましょうか。“My special talent is… ruff ruff! Dog impressions! Can you do one too? Try it with me… woof woof! わんわん!”(私の特技はね……ラフ、ラフ! 犬のモノマネです! あなたもやってくれますか? じゃあご一緒に。ウーフ、ウーフ! わん、わん!) どうでしょう?
優花さん おぉ、面白い! “Did you know dogs speak differently in Japanese and English?”(知ってた? 犬の鳴き声にも日本語と英語があるんだよ)とつなげるのはどうですか?
松宮さん いいですね、その調子です!
優花さん 実は、そろそろ恥ずかしくなってきて封印しようと思っていた芸なんですが。
和花さん やめられなくなったね(笑)。
謙遜は美徳じゃないんですね!(和花さん)
松宮さん そういえば、優花さんの自己紹介で友達から「変わっている」と言われる、という文脈で“strange”という単語が使われていましたね。よりポジティブで敬意のこもった褒め言葉として使われる“unique”の方がよいかも知れません。そのうえで、“Do you think so too?”(あなたもそう思いますか?)と問いかけてみるとか。
優花さん 「ユニーク」ですか。なんか自分をそう表現するのって照れくさいですね。
松宮さん いえいえ。皆の憧れの存在であるアイドルとして、自らを肯定的に、また自信をもって語ることは大切なことです。
和花さん 謙遜は必ずしも美徳じゃない、と。
松宮さん でも、マイナスな意味をもつ言葉をあえて使い、文脈の中で意味を転化させる手もあります。和花さんの「私を好きになって下さい」というメッセージ。これを例えば“Watch out! I will make you fall for me.”としてみると……。
和花さん “Watch out!”って「危ない!」「注意して!」みたいな意味でしたよね。
松宮さん そうです。その言葉を前置することで、「気を付けて! (さもないと)私のことを好きになってしまうかも……」という逆説的な意味合いをもたせて、さらに引き込むことができますね。
優花さん 否定的な言葉が文脈の中でポジティブな意味になったり、その逆もあったり。日本語でもそういうことよくありますね。
和花さん ただ単に「私を好きになって」というより、インパクトがあって、より深く印象に残りそうです。
コミュニケーションは相手とつくりあげるもの(優花さん)
優花さん コミュニケーションって、自分一人ではなく、相手と一緒につくりあげていくものなんだなと改めて感じます。日本でも英語圏でも同じこと。当たり前のことですが、しっかり意識していきたいですね。
松宮さん 英語を使う上で大切なのは、次のような問いにしっかりと向き合うことだと思います。「いつ・どこで・どのような状況で」「誰に対して」「何のために」「その結果、何を得たいのか?」
和花さん コミュニケーションの目的を明確にすることも大事ですよね。そこがあいまいだと、「何を伝えるか」「どんな言葉(単語)を使って伝えるか」も定まらない。
松宮さん まさにその通りだと思います。その場面に応じた「分かりやすい」英語でダイナミックに。
優花さん 私たち自身、普段から「アイドルをする目的」を意識しておくことも大事ですね。それが一つひとつのコミュニケーションの目的に落とし込まれていくわけだし。
和花さん 優花の「アイドルをする目的」は?
優花さん ファンの人たち一人ひとりの人生をより楽しく、より豊かにすることかなぁ。
和花さん 犬のモノマネで?
優花さん 犬のモノマネから離れて!
【私と英語】青原優花さんの好きな英語のフレーズは…
青原和花さんと優花さんが交代で、好きな英語の言葉やフレーズ、ことわざなどを紹介し、その理由をつづるコラムです。初回の担当は妹の優花さんです。
As someone told me lately:
“Ev’ryone deserves the chance to fly!”
ある人が言ったように、誰もが飛び立つチャンスを得るに値する。
◇
これは、映画「ウィキッド ふたりの魔女」(3月7日から日本公開)のクライマックスで主人公エルファバが歌う「Defying gravity」という曲の歌詞の1節です。
エルファバが自分の意志を信じ、世の中に一人で立ち向かう決断をしたことを高らかに宣言する場面です。
誰もが大空を飛んでいい――そうなのか。
とても心を揺さぶられるシーンでした。
私は昔から自分の意見を言うのが苦手で、いつも人の顔色をうかがっていました。
活動のことで今でも姉の和花に「これ、言ってもいいかな?」といちいち意見を求めてしまいます。「自分が言うべきだと思ったことならはっきり言えばいいじゃない」と姉の返事はいつも同じです。でも、自信のなさが先に立ってしまう。「アイドルとして経験の浅い自分がこんなことを言うのは生意気なんじゃないだろうか」と……。そんな自分に嫌気がさして、ますます落ち込むことも。
©UNIVERSAL MUSIC LLC
4月9日にリリースされた「チューストライク」というシングル曲で、姉の和花とともに歌唱メンバーに選んでいただきました。しかも、前の方のポジションに立たせていただいて。アイドルとしての大きな夢が一つかなった喜びとともに、信じきれない気持ち、「ファンの方々の間にも色んなお声があるだろうなあ」という心細い気持ち。そんな思いが一気に押し寄せてきました。
この曲は、恋愛がうまくいかない女性の気持ちを、野球で「ツーストライク」に追い込まれたバッターの心理にたとえたものです。
ここで空振りするわけにいかない!
ここで打ち取られたらチームのみんなや観客の人たちに顔向けできない!
打席にたたずむ野球選手の孤独な気持ちが、どこか分かるような気がしました。
そんなときに見た映画「ウィキッド」。特にこの歌詞は胸の深いところに響きました。チャンスは誰が手にしてもいい。そこで腰の引けた態度をとったり、遠慮しすぎたりする必要はないというメッセージとして。
大事なのはこれから。私はチャンスを手に入れたに過ぎない。ここからみんなに認めてもらえるようになること自体が挑戦であり、冒険の旅なのかもしれない。謙虚で前向きな気持ちをもって、ファンの人たちと一緒に笑顔と勇気を分け合いながら進んでいこう……と。
そうそう。バットを空振りして「あちゃ~」みたいな振り付けがあるのですが、そこでの私の表情にぜひ注目してほしいです。「ツーストライク」を、追い込まれた絶体絶命の状況ととらえるべきか。それとも余計な力みが消えて「ダメで元々」の思いきったプレーができるようになった状況ととらえるべきか。その問いに対する私なりの解釈を、表情に込めていますので!
最近ではNMB48に新しく10期生が加入してきて、私にとって初めての後輩ができたり、これまでNMB48を支えてきた先輩方が何人も卒業されたり、私自身もっとしっかりしなきゃ!と思います。今まで通りもじもじしている自分ではいられないという気持ちは強くなっています。
「どんなに疲れていても、ゆかたんを見ていたら元気が出てきたよ」って言ってもらえるようなキラキラした人になりたいというのが目標です。それがアイドルの存在意義だと思うので。これからも力いっぱい、バットを振っていきます!
記事の後半では、読者の皆様へのプレゼント企画の案内や、松宮教授が青原さん姉妹の英文(原文)をもとに観客とのやり取りの要素などを加えた例文を掲載しています。
【読者プレゼント】青原さん姉妹のサイン色紙を3人様に
抽選で3名様に、青原和花さ…