出荷サイズに育った「但馬とらふぐ」=2024年6月5日午後3時4分、兵庫県朝来市和田山町、菱山出撮影
  • 写真・図版

 「天空の城」で知られる国史跡・竹田城跡(兵庫県朝来市和田山町)のふもとで、地元の食品業者がフグの養殖に成功し、「但馬とらふぐ」の名称で6月から試験販売を始めた。安定出荷になれば、市はふるさと納税の返礼品にしたい考えだ。

 養殖に成功したのは和田山町の「朝来食品」。代表の中村峻さん(40)は神戸市出身で、大手精密機器メーカー社員として埼玉県で勤務した後、朝来市で起業した。

 市内の二つの旧幼稚園の建物を借りて16トンの水槽4基を設置。2022年8月から1基当たり1千匹弱の稚魚の養殖を始めた。

 当初は23年中の出荷を目指したが、「水質管理の不備や設備の不具合があり、試行錯誤を重ねた」(中村さん)。このほどようやく1匹当たり800グラム以上の出荷サイズに達したという。

 今月5日には、竹田城跡のふもとにある「竹田町屋カフェ寺子屋」で試食会があった。藤岡勇市長や、城崎温泉(豊岡市)、湯村温泉(新温泉町)の関係者らが出席し、てっさ、てっちり、唐揚げを試食した。

 てっさを食した藤岡市長は「地元のポン酢とよく合い、歯ごたえもいい。かめばかむほど味が出る。安定出荷となれば、ふるさと納税の返礼品にして支援したい」。

 城崎温泉の旅館「お宿白山」取締役の花村泰寛さん(38)は「カニのないシーズンに使える。但馬にはフグのイメージがないのでインパクトがある」。

 湯村温泉の旅館「朝野家」調理長の今井学さん(58)も「地域ブランドなので使いやすい。フグしゃぶでいけるかも」と評した。

 中村さんは「天然物や海面養殖物とは異なり、閉鎖循環式の陸上養殖なので、フグ毒がありません。養殖なので四季を通じて安定して出荷できる」と話す。

 試験販売は旅館などの業者向けに今年中に100匹を見込み、「来年の冬に本格出荷を目指したい」と意気込む。(菱山出)

共有
Exit mobile version