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9都県市首脳会議で発言する神奈川県の黒岩祐治知事=2024年4月22日、横浜市中区、増田勇介撮影

 住む地域によって福祉や教育に格差が生じている――。東京都が今年度から高校授業料の無償化で独自に所得制限を撤廃したことをめぐって、22日にオンラインで開かれた首都圏9都県市の首脳会議で、神奈川県の黒岩祐治知事や埼玉県の大野元裕知事と、東京都の小池百合子知事との間で、こんな応酬が繰り広げられた。

 黒岩知事は、東京都と神奈川県との間で法人二税(法人県民税と法人事業税)の人口1人あたりの税収に3倍以上の開きがあると指摘。「東京都が打ち出す施策に追いつくことができない」と口火を切った。

 その上で「財政状況を理由に県民の声に応えられずに苦しんでいるのは本県だけではない。国において何らかの対応が必要だ」と訴えた。

 神奈川県は今年度予算で、所得制限つきの私立高校無償化の費用として約42億円を計上したが、県の試算では、所得制限をなくすには、さらに200億円以上かかる。今回の9都県市会議が国に要望する「地方分権改革の実現に向けた要求」案に、税収の偏在是正についても盛り込むように求めたものの、意見が割れて盛り込めなかったことから、この日の発言につながったという。

 これに大野知事も、高校の無償化の所得制限の撤廃は「国が一律の制度で実施するべきものだ」とし、「行政サービスの不均衡が生じている」と同調。「国においてさらなる税の偏在是正措置を講ずべきだ」とした。

 これに対し、小池知事は「東京と名指しされたので、答えないわけにはまいりません」。都内ではマンション価格や物価の高騰で、子育て世代が苦しい環境に置かれているとして、「子育て世代をいかに守っていくか。もはや一刻の猶予もない」と反論した。

 高校授業料無償化の所得制限撤廃については「国の方策が講じられるまでの間、先行して判断したもの。国の責任と財源によって子育て世代などへの支援を図るように、9都県市で連携して働きかけることが重要だ」とした。

 首脳会議では座長を務めていた千葉県の熊谷俊人知事も「高校の授業料無償化など、住む地域によって差がつくべきではない状況が生まれている」と述べ、格差解消を求めた。(増田勇介)

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