悪石島やすら浜港付近。地震の影響なのか、山肌があらわになった斜面が見える=2025年7月9日、海上保安庁機から代表撮影

 鹿児島県・トカラ列島での群発地震が6月21日から1800回(最大震度6弱が1回、5強が3回、5弱が4回)を超えた。専門家も特異的な現象として注目する事態になっている。希望者の島外避難が始まって1週間となった11日、島民は疲れ切った表情を見せた。

 人口89人の悪石島に現在残る島民は20人。牛農家や消防団の人たちで、自治会長の坂元勇さん(60)もその1人だ。

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 高齢の両親を島外に避難させた6日午後。家でひと息ついていたらガタガタと大きく揺れた。外に出ようとしたらまた大きく揺れた。立て続けの震度5強が来た。

 「さすがに慌てた。どうなるんだろうこの島は、と」

 これまでの地震は「ドーンと大きなのが来てサーッと引いた」。でも今回は違う。「ドーンと来て、収まってもまたドーンと来る。だから怖いんですよ。だれも先を読めない」

 1日100回を超していた地震は9日に49回、10日は22回と減った。「静かになったらなったで、不気味。エネルギーをため込んでドカーンと来るんじゃないかと。悪い方に悪い方に考えてしまう」。11日は地震が再び増え始めた。

 雨も懸念材料だ。「亀裂に雨が入るとガサガサーっと崩れるかもしれない」。心配は尽きない。

 一方で、避難者からは「そろそろ帰りたい」という声が出始めた。

 その1人、有川和則さん(73)は「島が心配。早く帰りたい」と漏らす。

 漁をしながら民宿を営む。睡眠不足から体調を崩し、6日の第2陣で島外避難した。妻と鹿児島市内のホテルに滞在する。

 揺れから解放されても、すぐにはぐっすり眠れなかった。避難初日は地震の夢で目が覚めた。自宅が傾き、柱の根元からなぜか温泉が噴き出す夢だ。その後もホテルの前を大きな車が通るたび「地震だ」と目が覚めた。初めて熟睡できたのは9日夜だった。島の地震が落ちついていた。

 避難中もテレビやスマホで常に島の様子を気にかける。体調が回復した今は島が心配で仕方がない。「道路に岩が落ちたと聞いた。早く帰って復旧を手伝いたい」。台風も心配。大事な船は強めに係留してきたが、もし直撃されたら。「船がなくなったら、寂しい」

 大きな地震がなければ村の判断を待たず、14日の定期便で島に帰るつもりだった。だが11日午後、震度4が2回続いた。「朝から多かったからスマホを見ていたら、案の定、来た。14日は無理でしょう。先が全然見えない」

 とはいえ、帰ったら帰ったで心配もある。「体が揺れを覚えとる。弱い地震でも、また始まったと捉えるかもしれん」。共に避難する妻は「戻るのはもう少し後にしてほしい。また大きいのが来るんじゃないかって心配です」と気遣った。

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