11月6日夜、東京・紀尾井町のホテルニューオータニの日本料理店の一室。首相の石破茂は、政務担当首相秘書官の槌道明宏、吉村麻央の2人と向き合っていた。石破が最も信頼する側近であり、槌道は石破が防衛相当時の大臣秘書官を務め、吉村は政策秘書として長年支えてきた人物。石破は厳しい表情を浮かべ、こう嘆息した。「これから何をどう進めていけばいいのだろうか……」
発足から1カ月余、政権はいきなり窮地に陥っていた。10日前の衆院選で自民党は大敗して少数与党に転落。1994年の羽田内閣以来初めてで、羽田内閣はわずか64日間の短命政権で終わった。翌7日は衆院選を総括する両院議員懇談会が控え、党内には衆院敗北の原因をめぐって石破の「変節」批判がくすぶっていた。
「何をやる政権か明確にした方が良いです」「『石破らしさ』を出すべきです」――。この食事中、2人から何度もこう迫られた石破だが、表情はさえなかった。
「乱暴な政権運営はできない」
首相は元来、最大与党のトッ…