連載「子どもとSNS」
オーストラリアで子どもがSNSを使えなくなる――? 16歳未満のSNS利用を禁じる法案が豪州議会で可決され、「世界初」と報じられている。だが、現地では保護者ら大人の意見と、子どもの言い分が大きく異なったまま。子どもとスマホの付き合い方は変わるのか。
最大都市シドニーに暮らすグレン・ヒュースさん(57)と妻の千佳さん(52)は昨年末、長女(12)のスマホを一時的に取り上げ、使用を禁止した。
きっかけは、写真や短い動画を共有するアプリ「スナップチャット」をめぐる「事件」だった。アプリの対象年齢は13歳以上だが、長女は年齢を偽ってアカウントを取得。ある時千佳さんはスマホをのぞき、長女のアプリのグループ内で、子どもたちが「汚い言葉」でののしり合うやりとりを見つけた。
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千佳さんは学校に報告。緊急集会が開かれ、校長が生徒に注意を呼びかけた。長女はやりとりに関わってはいなかったが、アプリを削除した。
夫のグレンさんは政府が16歳未満のSNS利用を禁じる法律について、「大賛成。全ての家庭や学校で統一したルールが必要だ」と話す。
千佳さんも同じ立場だ。「部屋で1人でスマホを使わないで」「スクリーンタイム(利用時間)を守って」など、子どものスマホの使い方を注意しない日はない。SNSはスマホ使用を促す一因となっている。
千佳さんは「スマホのせいで親子のけんかが増えて、家族関係がギスギスする原因になっている」と言う。政府の利用規制に対し、「家庭のルールの徹底には限界があるが、『国が決めた』と言えば親の説得力も増す」と期待する。
子どもでいる時間「無駄にしてほしくない」
豪アルバニージー首相は昨年9月、SNSが子どもの心身の健康に悪影響を及ぼすことなどを理由に法案の提出を表明。その2カ月半後には、議会が法案を可決した。
法律は、スナップチャットや…