入院中、教室から配信される同時双方向型の授業を受ける澁谷仁美さん=2022年2月、後藤静教諭提供

 入院・療養中も学びを続けたい――。コロナ禍で進んだオンライン授業が、病気療養中の生徒の心の支えとなっている。同時双方向型の授業に加え、事前収録の動画を視聴する「オンデマンド型」も単位として認められるようになった。治療と勉強の両立支援は、生徒の症状や治療内容により異なるため、東海3県でも一人ひとりにあった環境整備の模索が続く。

「知識も教材もない…」から始まった

 コロナ下の2020年秋、愛知県稲沢市の県立杏和(きょうわ)高校。「どうやってやっていくの? 知識もないし、機材もないし……」。福祉科の後藤静教諭(60)は職員室で頭を抱えていた。当時1年生の澁谷仁美さん(20)が難病の再生不良性貧血で名古屋大学医学部付属病院に入院し、病院側から遠隔授業の打診があったからだ。後藤教諭は同校の「特別支援教育コーディネーター」として、生徒や保護者、学校、病院間の連絡調整を担うことになった。

 澁谷さん本人の学習意欲は高かった。「留年なら学校をやめたい。なんとしても進級したい」という意向が伝わっていた。後藤教諭は、治療と学業の両立支援に知見のある愛知県立大府特別支援学校の協力も得て、タブレット端末を用いた双方向型のオンライン授業で単位取得を目指すことにした。

 「出席確認はどうするのか」「テストの監督は」。次から次に出てくる課題に、教員らで知恵を出し合った。吐き気やだるさがひどい時は、タブレット端末の「手挙げマーク」を押すことで出席扱いとし、定期テストでは問題を解く手元を常に映して、そばで医療スタッフが立ち会うことで課題を乗り越えた。

学びへの意欲、目の当たりにして

 周囲の理解も必要だった。病…

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