アルト・サックスを吹く山崎日葵さん=2024年7月28日、鹿児島市の川商ホール、加治隼人撮影

 第69回鹿児島県吹奏楽コンクール(県吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)は28日、高校B部門の審査があった。県代表は与論と伊集院に決まり、8月11日に鹿児島市である南九州小編成吹奏楽コンテストへの出場権を得た。

 高校Bは奏者20人以下の小編成向け部門で、各団体とも自由曲1曲を演奏した。県代表以外では、加治木工、種子島、薩南工・川辺(合同バンド)が金賞に輝いた。

自由曲で「眩い星座になるために…」を演奏した指宿高校吹奏楽部。この春に3年生2人だけだった部は、コンクールに向けて奮闘します。そして、作曲者へある思いを「伝えよう」と本番の舞台に上がりました。

後輩の一言、先生の無言の言葉が導いた「結果より大事なこと」

 「八木澤さん、聴いてくれてますか」

 木管楽器を軸にした、わずか6人の編成で舞台に立った鹿児島県立指宿高校。部長でアルト・サックスの山崎日葵(ひなた)さん(3年)は、そう願いを込め、自由曲「眩(まばゆ)い星座になるために…」のソロを奏でた。

 「八木澤さん」は、この曲をはじめ、数々の吹奏楽曲を手がける作曲家の八木澤教司(さとし)さんのこと。この日の審査員の一人として2階席にいた。

 山崎さんには、自分たちの音楽をぜひ聴いてほしいわけがあった――。

 部員不足が悩みの種だった。昨夏は4人しかそろわず、コンクール参加を見送った。

 その前の年は13人でコンクールにも問題なく出場できたが、大半を占めていた3年生の引退で一気に減った。

 昨夏以降は、山崎さんと打楽器の本間くるみさん(3年)、後輩1人の計3人だけ。「小編成バンド向けの曲さえできない」状態になった。

 当時の顧問や楽器経験のある先生らも演奏に加わり活動自体は続けたが、演奏機会はぐんと減った。

 「部員が何十人もいたらさ、『ディープ・パープル・メドレー』とか、『銀河鉄道999』とか吹きたいよね」

 練習が終わると、山崎さんと本間さんはそんな空想話にふけった。

 でも、現実に吹けるのは、ずっと同じ曲。新しい曲に手を出すには、少人数向けに書かれた楽譜でさえも、自分たち用にさらに編曲するなど手間をかけないといけない。そもそもそんな技術もない。

 放課後のチャイムが鳴ると、山崎さんは「部活か…」と思うようになり、音楽室に向かう足取りは重かった。

 さらに後輩1人も辞め、山崎さんと本間さんだけが残った。

 そんな状況で迎えた今年の4…

共有
Exit mobile version