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「日本一標高が高い駅」や国立天文台野辺山宇宙電波観測所の案内板が立つJR野辺山駅=長野県南牧村

現場へ! 限界不動産(4)

 八ケ岳連峰の最高峰、赤岳(2899メートル)を眼前に望むJR小海線野辺山駅は、JRの路線で日本一標高が高い駅だ。この駅がある長野県南牧村は夏でも比較的涼しく、避暑地としても知られる。

 駅から国道141号を北へ3キロ余りの地区に、東京都杉並区に住む上田潤さん(76)の土地がある。父が1969年に買った約1900平方メートルを2019年に相続した。父は家を建てるつもりだったが、タイミングを逸して雑木林になっている。

 まわりには別荘地や山林、農地が混在する。固定資産税は今年、約4万円を納めた。税額の基準となる土地の評価額は430万円余りで、それをもとに算定した実勢価格は600万円以上になる。

 「周辺の別荘地の広告をみても、そこそこの値段がついているので売れるだろう」。そう考え、地元の不動産業者に相談した。

 ところが、法務局が「公図」を閉鎖しているため、売買が難しいという。公図は土地の形状や位置を示す公的な地図で、境界線の争いが起きた時などには重要な判断材料になる。その公的な地図から、土地が消えていたのだ。

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「公図」が閉鎖された上田潤さんの土地。近くにある牧場の人が案内してくれた=長野県南牧村

 なぜ、こんなことが起きてしまったのだろうか。

 調べると、土地の所有権をめぐる争いが起き、1980年ごろに閉鎖されたという。その裁判記録などによると、発端は1907(明治40)年ごろまでさかのぼる。

120年近く前の区画整理が影響か

 現在の国道141号を通す際…

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