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取材に応じる社会心理学者でテルアビブ大学名誉教授・ダニエル・バルタルさん=2025年3月23日、テルアビブ郊外、高久潤撮影
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 イスラエル社会で、パレスチナ人との「共存」が、語られなくなっている。2023年10月にイスラム組織ハマスによってパレスチナ自治区ガザに拉致された人質の解放のための停戦は語られるが、パレスチナの民間人被害への関心は薄い。占領体制とイスラエル世論の関係を研究してきた社会心理学者のダニエル・バルタル氏は、その背景に「被害者意識の制度化」があると指摘する。

略歴ダニエル・バルタル氏

1946年、旧ソ連のタジキスタンでポーランド系ユダヤ人の家庭に生まれる。テルアビブ大学名誉教授(社会・政治心理学)。イスラエルの占領を終わらせ、パレスチナ国家樹立に貢献する平和団体を設立したこともある。

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 ――イスラエル軍によるガザやヨルダン川西岸での軍事作戦で、民間人に甚大な被害が出ています。ただ、イスラエル社会の関心は低い。そのことに驚きませんか。

 「驚きません。イスラエル社会は今、集団的な『否認と抑圧』の中にあります。テレビニュースで放送されるのは、23年10月7日のハマスの奇襲攻撃の残虐さと、イスラエル側の人質の行方についてです。さまざまな世論調査を総合すると、パレスチナの状況にある程度関心があるのは人口の5~8%程度でしょう」

■イスラエル世論を支配する否…

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