「袴田巌さんに無罪判決」の旗を掲げる弁護団ら=2024年9月26日、静岡市葵区

 有罪が確定した裁判をやり直す再審制度の見直しについて、鈴木馨祐法相は28日、法制審議会に諮問した。重大事件の再審無罪が相次ぎ、見直し議論は避けられないと判断した。再審制度は、現行の刑事訴訟法が1948年に制定されて以来一度も改正されていない。

  • 【朝日新聞アンケート】再審請求の経験した裁判官の回答詳報、法改正の提言続々

記事の後半では、「証拠開示」のあり方がどのようになされてきたのかや、議論のポイントについて、裁判官の経験やイラストを交えて紹介。証拠開示が再審開始の決め手になった主な事件一覧も掲載しています。

 見直しの必要性は長年指摘されてきたが、法務省はこれまで消極的な姿勢を崩さなかった。今後は法制審の議論が、冤罪(えんざい)被害の救済手段としての実効性を高めるルール作りにつながるかが注目される。

 刑訴法改正案の今国会提出を目指す超党派の国会議員連盟は、証拠開示のルール整備や検察による抗告禁止などを再審制度見直しの柱としている。これに対し、法制審への諮問では、個別の論点に限定せず、制度全般についての検討を求める。

 近年再審開始が決まった事件では、有罪が確定した裁判に検察が提出しなかった証拠が決め手になる例が相次いだ。また、裁判所の再審開始決定に対し、検察が抗告することにより、再審が開かれるまでに長期間を要するとの批判もある。

 昨年9月には、静岡県で一家4人が殺害された事件で、死刑確定から44年を経て袴田巌さんに再審無罪が言い渡された。審理の進め方の規定が乏しく、結論を得るまで長期化しがちな現状の制度の見直しを求める声が改めて高まっている。

「不存在」の証拠、一転して「開示」も 裁判官が語る実態

 再審制度の見直し議論の最大の焦点は、検察が通常の裁判では提出せず、保管されたままの証拠の開示のあり方だ。

 ある現役裁判官は朝日新聞のアンケートに再審審理での経験を明かす。

 「明らかに存在が推認される証拠について『見当たらない』『紛失の可能性あり』とされ、開示されないことがあった」

 この裁判官は、再審請求審で…

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