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【動画】福岡伸一教授のノーベル賞解説 マイクロRNA「地味でさえない研究者」がまさかの大発見

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青山学院大学教授の福岡伸一さん

 今年のノーベル生理学・医学賞は、ごく短い「マイクロRNA」が遺伝子を制御するしくみを解明した、米マサチューセッツ大のビクター・アンブロス氏と米ハーバード大のゲイリー・ラブカン氏が選ばれた。どんな研究でどんな意義があるのか、分子生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一さんに解説してもらった。今回の大発見のかぎになったのは、競争に明け暮れる研究者の日常とは少し異なる「利他」の精神だった。

  • マイクロRNAのノーベル賞「受賞もうない?」が一転 研究者が解説

 ノーベル生理学・医学賞は、昨年に続き今年もRNAの研究者に決まりました。昨年は新型コロナのmRNAワクチン開発の基本技術を見つけたカタリン・カリコさんとドリュー・ワイスマンさんでした。コロナパンデミックを救ったワクチンにつながる研究でとても実用的な研究でしたが、今年は基礎的な研究に光が当たりました。

 今年の生理学・医学賞が贈られる米マサチューセッツ大のビクター・アンブロスさんと米ハーバード大のゲイリー・ラブカンさんは、線虫を使ってどんな遺伝子異常が起こるかを研究していました。線虫が巨大化したり小さいままで終わったりするのは、研究の結果lin-14という遺伝子の異常のせいだとわかりました。一方、lin-14の発現量の調整にはlin-4という遺伝子が関わっているのを発見しました。lin-4が壊れるとlin-14が壊れるのと同じ結果になる。

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マイクロRNAの発見は遺伝子制御の新たな次元を明らかにした=ノーベル生理学・医学委員会提供

 アンブロスさんの研究によってlin-4は、一般的な遺伝子と違い、たんぱく質には翻訳されない短いRNAであることがわかりました。ラブカンさんは、lin-14の遺伝子情報を解読していました。

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ビクター・アンブロス氏=ノーベル財団のウェブサイトから

 今回の受賞研究で最も重要な瞬間だったのは、2人の研究者が利己的に競争するのではなく、利他的に情報を共有した時に訪れました。

電話で読み上げた遺伝子情報から

 ハーバード大の公式ニュース…

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