介護

 労働者なら取得できる介護休業や休暇の制度が十分に利用されず、「介護離職」を防ぎ切れていない実態が、東京商工リサーチが5千社以上に行った企業アンケートで浮き彫りになった。介護離職者が出た企業の55%が、介護休業・休暇制度を利用しないまま離職した、と回答した。周知が不十分だったり、代替要員の確保が難しかったりすることが背景にあるとみられる。

 育児・介護休業法改正で、4月から介護離職を防ぐ環境整備などが企業に義務づけられたのに合わせ、東京商工リサーチが1~8日にネットでアンケートを行い、5570社(大企業423社、中小企業5147社)から有効回答を得た。

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 2024年度に、介護を理由とした退職(介護離職)が「発生した」との回答は405社(全体の7.4%)。大企業で46社(12%)、中小企業で359社(7%)だった。介護離職者が出た企業のうち、介護休業・休暇の制度利用が「なし」との回答が大企業で38.8%、中小企業で56.3%を占めた。

大手企業と中小で広がる「利用格差」

 介護休業・休暇制度の利用状況では、大企業と中小企業で大きな差が出た。24年度中に介護休業が「発生した」と回答した割合は、大企業13.7%に対し、中小企業3.6%。介護休暇が「発生した」も大企業26.1%に対し、中小企業は8.8%にとどまった。

 中小企業の半数近く、大企業の7割超が、介護休業・休暇の利用をマニュアルなどで明文化していると答えたが、十分に利用されていないことがうかがえる。

 仕事と介護の両立支援について「十分だと思わない」と答えた企業は全体の4割弱、「十分だと思う」は2割弱。「十分でない」理由を複数回答で尋ねたところ、「代替要員を確保しにくい」が62.6%で最も多く、「自社に前例が少ない」(49.5%)、「制度が社員に浸透していない」(25.5%)が続いた。

 大企業では「職場の雰囲気(上司・同僚の意向)」を挙げた割合が18.8%と、中小企業(6.4%)より高かった。一方、中小企業は「自社に前例がない」が50.5%で、大企業の36.4%を上回った。

■代替要員が確保しにくい…

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