全国共済神奈川県生活協同組合=横浜市中区常盤町

 全国共済神奈川県生活協同組合(横浜市中区)は、前理事長による財産流出や職員へのセクハラなどを指摘する第三者委員会の調査報告書を公表した。特定業者への工事発注に伴う損害は5千万円以上とされ、同組合は新体制で刑事・民事での対応を検討する方針。

 同組合によると、前理事長の男性は1994年に同組合に入り、2010年に理事長に就任した。前理事長の問題を指摘する公益通報が昨年1月にあり、第三者委を設けて調べていた。

 報告書は、組合の工事計画について「実質的な意思決定者は前理事長だった」とした上で、エレベーターやエアコンの設置など、特定の業者に発注された工事5件について検討。支払われた代金と適正金額の差額は約8650万円とした。うち、18年のカラーガラス追加工事(約540万円)は「実際には行われておらず、架空計上の疑いが濃厚」とした。その上で、同組合の損害額は「少なくとも5千万円を下らない」と指摘した。

 前理事長の通勤手当の不正受給も認定した。前理事長は「事務が勝手に手続きを行った」と弁明し、約140万円を返金済みだという。報告書は「前理事長が特別扱いを受け続けてきたことは、組織として適正なガバナンスが機能していなかったことの一つの表れ」と指摘した。福利厚生費の虚偽計上もあり、職員へのパワハラやセクハラに該当し得る行為が多数あったことも指摘された。

 報告書は「前理事長の専横に対するチェック体制が組織内で機能していなかったことが種々の問題の原因」とし、他の幹部2人の責任についても言及した。取引におけるガイドラインの策定や職員が不安なく声を上げられる環境など、多層的な体制構築が必要だとした。

前理事長側「重大な疑問と誤り」

 報告書は「強制的な調査権限がなく事実認定や評価は変わり得る」としている。前理事長は幹部2人とともに昨年6月に退任。朝日新聞は同組合を通じて取材を申し込んだが、代理人弁護士は「当職ら及び前理事長は取材に対応しない」と回答。前理事長側は同組合に対し、「調査報告書には重大な疑問と誤りがある」と通知しているという。

 同組合は取材に「信頼を取り戻すべく、事実関係の解明や原因分析、再発防止に努めてきたが、報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、再発防止策の検討を始め、法令順守を最優先とした組織改革に取り組む。組合員の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけし、期待を大きく裏切る事態を招くとともに、社会からの信頼を損なう結果となったことに対し、深くおわびを申しあげる。各共済契約は、これまでと変わりなく、万全の体制で業務を進める」などとコメントした。

 同組合は知事の認可を受け、共済事業を行う消費生活協同組合法に基づく生協法人。都道府県民共済グループの一員で、神奈川県民共済生活協同組合とは別組織。組合員数は約61万人(2月末時点)、共済受託手数料収入は約20億円。

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