第107回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の大会第8日の13日、群馬代表の健大高崎は、初戦となる2回戦で京都代表の京都国際と対戦し、3―6で敗れた。昨夏の全国選手権大会と昨春の選抜大会の優勝校同士の対戦として注目を集めたが、健大高崎がめざした夏の甲子園初制覇の目標はかなわなかった。
「機動破壊」「強打」健大高崎らしい攻め
◎…2点を追う三回、「機動破壊」の健大高崎らしい攻めで3点を挙げ、逆転した。
1死から俊足の石田雄星(2年)が得意のバント安打で出塁し、敵失の間に二進。初球を見逃したときに「次の球はいけそうだ」と直感し、2球目を一塁方向に巧みに転がした。
続く加藤大成(3年)と秋山潤琉(ういる)(3年)が連続死球を受けて満塁に。2死後、加藤が暴投の間に本塁を陥れ、1点をかえした。さらに二、三塁から小堀弘晴(3年)はバントからスイングに切り替えるバスターの構え。フルカウントから好投手・西村一毅(3年)の低めのチェンジアップを振り抜くと三塁手横を抜ける二塁打となり、2点を加えた。「不格好かもしれないけど、とにかくつなごうとして打ちにいった」と小堀。
青柳博文監督は試合前、チェンジアップで打者を翻弄(ほんろう)する西村に対し、「1、2番の石田、加藤の出塁がキーになる」と期待を寄せていた。加藤は「ヒットが少なくても点が取れる自分たちらしい攻撃が序盤にできて、2年半の集大成が形になった3点だった」。
「投手王国」の粘り エース155キロも
◎…先発マウンドは、安定感のある下重賢慎(3年)。いきなり一回1死一、三塁のピンチを迎える。スクイズで先制点を許し、適時打も浴びた。味方が逆転した三回には右翼線二塁打、中前安打と連続適時打を浴び、計4失点。「どこに何を投げても対応してきて、投げていて嫌になる打者がそろっていた」
続く四回は群馬大会で好投した山田遼太(3年)が継投した。だが、安打に犠打、四球で2死一、三塁のピンチ。「頼む。抑えてくれ」。託された佐藤龍月(3年)がこの回をピシャリと抑えた。だが、五、六回に1点ずつ奪われる。佐藤は「いい流れだったのに、自分が抑えきれなくて、とても悔しい」。
そして七回、3点を追う苦しい展開。「この投手陣で打たれたらしょうがない」。終盤を託されたエース石垣元気(3年)は「絶対に3人ずつで抑える」と強い決意でマウンドに上がった。甲子園でも155キロの豪速球を披露し、1球ごとにどよめきが起きた。安打を許しながらも2イニングを無失点に抑え、反撃ムードを演出した。
「悔いはない」「力及ばず」
◎…「九回の攻撃をあと4回やろう」。五回終了後のクーリングタイム。残り4イニングを最後の攻撃のつもりで――。主将の加藤が呼びかけた。
だが、六、七回は打者3人で攻撃が終わる。そして八回。「投手は石垣。1点でも取れれば流れはこっちにくる」。加藤が振り抜いた打球が中前安打となり、暴投の間に二進。秋山の左飛でタッチアップして三塁へ進み、好機を作った。
九回2死から佐伯幸大(3年)が代打に。過去に4番にも座った打者だ。「どんな形でも塁に出て、火付け役になってやる」。しっかり見極め四球で出塁した。「絶対につなぐ」。そう意気込んだ伊藤大地(3年)は左飛に打ち取られた。四回以降得点を奪えず、試合は終わった。
捕手の小堀は「力が出し切れなかったわけではなく、力で負けた。京都国際に対して力が及ばなかった」と振り返った。
秋山は「九回2死から涙が出てきたけど、試合が終わって『悔いはないな』と思えた。涙、やめました」。少し涙目の笑顔を見せた。
●青柳博文監督(健大高崎) 「四球やミスから点を取られ、自分たちがやるべき野球をやられた。4安打だと得点しにくい。絞り球も甘かった」
●加藤大成主将(健大高崎) 「素晴らしい相手と甲子園で戦えてよかった。このチームの集大成として、やれることは最大限やれた」