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 クーデターで全権を握った国軍と武装勢力の紛争が長期化するミャンマーで、観光業が「壊滅的」な打撃を受けている。かつてにぎわった観光名所では閑古鳥が鳴く。旅行者が戻る日は来るのだろうか。

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 沈む夕日が赤れんがのパゴダ(仏塔)をあかね色に照らす――。幻想的な光景はミャンマー中部バガンの観光のハイライトのはずだが、夕日スポットの小高い丘に観光客は数人しかいなかった。

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木々の中に立ち、夕日に染まるバガンの仏教寺院=2024年7月12日、ミャンマー中部バガン、笠原真撮影

 「買ってくれないか」

 7月、巻物の絵を売る男性(43)が困り顔で声をかけてきた。コロナ禍前は観光バスが何台も並び、外国人客が1日500人は来たが、「今は月に2~3人」。記者が2万チャット(公定レートで約1400円)の絵を買うと男性は感謝し、「買ってくれた人は数週間ぶり」とため息をついた。その直後、土産物売りの少女も「買って、助けて」と片言の日本語で話しかけてきた。

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夕暮れ時には、林立するパゴダ(仏塔)や寺院を夕日が照らし、幻想的な光景を作り出す=2024年7月12日、ミャンマー中部バガン、笠原真撮影

 エーヤワディー川の中流域にあるバガンは、約40平方キロの平野にパゴダや寺院などが数千棟立つと言われる仏教の聖地。カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥールと並ぶ「世界三大仏教遺跡」の一つとして知られ、2019年には世界文化遺産に登録された。ミャンマー随一の観光地だ。

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