2024年5月28日、創立60周年を迎えた国防科学院の展示館を視察する金正恩総書記(左)。朝鮮中央通信が配信した=朝鮮通信
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 米アカデミー賞7冠を獲得するなど世界的に注目を集めた映画「オッペンハイマー」。米国の核開発を成功に導く一方、核兵器の非人道性に苦しむ主人公の姿が共感を呼んだ。北朝鮮でオッペンハイマーのような人物が現れることはあるのだろうか。米韓連合軍司令部戦略部長などを務めたロバート・コリンズ氏に聞いた。

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 コリンズ氏は今年5月、北朝鮮の核開発に関する報告書「爆弾の奴隷」を発表した。報告書によれば、小学校の段階から、算数や理科で優秀な成績を収めた子供を選抜し、金日成総合大学などで核開発の知識を学ばせる。コリンズ氏は「彼らには、自分の才能や知識を核開発以外に使う権利はない」と語る。

 北朝鮮では独裁体制を維持するため、政府や軍、研究機関などが自由に情報や意見を交換することが禁じられている。核開発でも、核物質の抽出や核爆弾の製造など、担当分野を細かく分け、お互いの交流を許してこなかったが、こうした体制が核開発においては逆に障害になったという。

 コリンズ氏は「誰も、ましてや核科学者は、朝鮮労働党の政策に反対できない。オッペンハイマーのような人物が北朝鮮の人間だったら、核開発に抵抗する最初の兆候が現れた段階で処刑されただろう」と語る。

 朝鮮中央通信によれば、金正恩(キムジョンウン)総書記は5月、創立60周年を迎えた国防科学院を訪れ、科学者を激励した。金氏は「現在の情勢は、国家武力を超強力的かつ絶対的な力の実体に絶え間なく発展させることを求めている」と語った。(牧野愛博)

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