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当事者団体が超党派の議員連盟や与野党に送付した意見書兼質問書=2025年1月30日、東京都内、友永翔大撮影
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 精子提供などを受けて行われる生殖補助医療(提供型生殖補助医療)で生まれた子の「出自を知る権利」を守る目的で、与野党が国会への提出を目指している「特定生殖補助医療法案」について、当事者団体が内容の見直しを求める意見書を提出した。事実婚や女性同士のカップルなど法律婚でないケースを対象外にしている法案は憲法違反の疑いがあり、出自を知る権利も十分担保されていない、などと指摘している。

 提供型生殖補助医療で出産した人などの四つの当事者団体が21日までに、法案を検討している超党派の議員連盟と、与党を含む八つの政党に意見書を送付した。

 検討されている法案は、第三者の精子や卵子を用いる生殖補助医療のルールを定めるもので、子どもの出自を知る権利の保障が目的。提供型生殖補助医療で生まれた子が成人後に希望すれば、精子・卵子提供者の年齢・身長・血液型などの情報を知ることができるようになる。

 医療の対象は法律婚の夫婦に限られ、行政からの中止命令に違反した医師などへの罰則もある。このため、事実婚、女性同士のカップル、選択的シングルマザーなど法律婚以外の形で子を望む人が生殖補助医療を受けることが「違法行為」になる恐れがあるとして、見直しを求める声が当事者団体などから出ていた。

 意見書では、法律婚以外のケースを医療の対象外にすることは、幸福追求権や法の下の平等を定めた憲法に違反する疑いがあるとして、対象範囲を広げるよう求めた。罰則についても、すでに同じ医療で生まれている多くの子どもたちに「犯罪になるべき行為によって生まれた」というレッテルを貼ってしまうため、過剰だとも訴えている。

 また、出自を知る権利も十分に担保されていないと指摘。成人する前から子どもの希望に合わせて出自を伝えられるよう、趣味や提供者になった理由など個人を特定しない提供者の情報を妊娠がわかったときに親にも伝えてほしいなどと訴えた。

 意見書をまとめた当事者団体「ふぁみいろネットワーク」の戸井田かおり共同代表は「法案の提出が迫り、声を上げられる最後の機会かも知れないと思って意見書を作った。法案に疑問を持つ議員が増えてほしい」と法案の見直しにつなげたい考えを語った。

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