韓国の新たな大統領になった李在明(イジェミョン)氏は4日、就任演説で北朝鮮との対話に意欲を示しました。北朝鮮は韓国を敵視する政策を取っており、南北対話には困難が予想されます。韓国の情報機関、国家情報院の第1次長を務めた金塾(キムスク)元駐国連大使は「南北がまず、水面下の接触を再開する必要がある」と語ります。
――北朝鮮の韓国敵視政策をどうみますか。
北朝鮮は韓国に吸収されることを恐れています。韓国は経済力で北朝鮮を圧倒し、韓国の文化が北朝鮮に浸透しています。恐怖にかられた北朝鮮が出した結論が、韓国を全く別の国だと位置づけ、核とミサイル開発を通じ、武力を誇示する姿勢によってすべての問題を解決することでした。
トランプ米大統領が何度も北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記との良好な関係を強調していますが、北朝鮮は沈黙しています。北朝鮮はロシアとの協力を深めており、米国にすぐに接近しなければならない切迫感はありません。
北朝鮮にとって対南関係は、対米関係よりも優先順位が低いのです。李在明大統領が北朝鮮にどんな融和的なメッセージを送っても、北朝鮮から肯定的な反応を得られないでしょう。
「トン・トン」ラインから「クッ・クッ」ラインへ
――国情院第1次長時代、南北秘密接触をした経験があるそうですね。
私は李明博(イミョンバク)政権当時の2009年2月、国情院第1次長に就任しました。08年に発足した李政権は当初、韓国統一省と朝鮮労働党統一戦線部の「統・統(トン・トン)ライン」で秘密接触をしていました。
ところが、大量の食糧支援を求める北朝鮮と、南北首脳会談を望む韓国との間で議論がかみ合わず、チャンネルが機能しなくなっていました。
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