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遠藤典子(えんどう・のりこ) 京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了、博士(エネルギー科学)。経済誌副編集長などを経て、東京大学で研究活動に従事。2015年に慶応義塾大学特任教授、24年から早稲田大学教授。経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会、原子力小委員会の委員を務める。著書「原子力損害賠償制度の研究―東京電力福島原発事故からの考察」(岩波書店)で第14回大佛次郎論壇賞受賞。

 岸田文雄政権は2023年に閣議決定した「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で、原発を「最大限活用する」方針に転じ、廃炉が決まった原発の敷地内で次世代革新炉に建て替え(リプレース)を進めることを決めました。しかし、大手電力は巨額の安全対策費や、事故時の賠償のリスクも抱えることから、投資に二の足を踏んでいます。政府は原発に必要な費用を電気代に上乗せして回収する「総括原価方式」の検討を進めていますが、賛否の分かれる原発の費用を広く国民に負担させることに反発も起きそうです。

 「原発の建て替え(リプレース)に今すぐ着手を」。エネルギー政策に詳しい遠藤典子・早稲田大教授はそう提言しています。国内の原発産業を育成すれば、エネルギー安全保障上の対応にもつながるとの考えからです。

 ――産業をまもる観点からも、原発のリプレースにすぐに着手すべきだとのお考えですね。

 「日本には原子炉メーカーがあり、格納容器を自前で生産できるのに加え、付設するバルブやポンプなどの部品も国内で調達できます。サプライチェーンが国内に完結されている産業はいまや限られていて、極めて重要です。AI(人工知能)データセンターや半導体工場など、電力需要が爆発的に増える予測がされている時に、24時間365日、安定的に発電でき、脱炭素に貢献し、国内に産業基盤のある原発を活用しないで、ほかにどのような解があるのでしょうか」

 ――再生可能エネルギーを増やして対応する方法はどうお考えですか。

 「晴れている間や風が吹いている間しか発電しない太陽光や風力には、負荷調整が必要ですから、バックアップのための火力発電や余分な電気をためておく蓄電池などが必要となります。太陽光の国土面積あたりの導入量は、すでに主要国でトップレベルですから、再生エネをさらに増やすのであれば、原発のように安定電源である地熱の開発を拡大すべきだと思います」

 「太陽光や風力の基幹部品は中国製が多く占めています。また、蓄電池の素材となるレアメタルやレアアースも、生産から製錬まで中国に依存している現状です。脱炭素を進めるために、経済安全保障を犠牲にしてよいわけではありません。また、脱炭素社会の実現は、自国の産業競争力を高めることと両輪で進めるべきだと考えます」

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遠藤典子・早大教授=2024年7月16日午後4時26分、東京都港区

 ――では、原発推進は日本経済にプラスに働きますか。

 「原発が稼働している地域とそうでない地域の電力料金を比較すれば明らかですが、原発の再稼働によって電気料金は引き下げられています。また、原発の近くには、大容量の送電線など電力系統が充実しており、大量の電力を消費するAIデータセンターや半導体工場は、原発立地地域の周囲に建設することが効率的だと考えるから、立地地域の経済を潤すことになる。日本は原発のウラン燃料を輸入していますが、爪の先ほどの11グラムで、1世帯の電力を約1年間まかなえるため、『準国産』と位置付けられています。エネルギー資源を輸入に依存している日本は、エネルギー安全保障の点からも原発を否定できません」

 ――ただ、政府が思うようには再稼働できていません。事故の不安や先行きの不透明さから、リプレースのための投資も進んでいません。

 「安全が確認された原発につ…

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