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有事の際の住民避難を想定し、昨年、沖縄県石垣市の新石垣空港で市職員らが避難経路などを確認した=2024年9月25日午後9時31分、新石垣空港、伊藤和行撮影
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 「未曽有の事態。すべて想像しながらつくる難しさがある」。九州・山口8県の自治体担当者、ホテルやバス業界の関係者は戸惑いを隠さない。

 初期計画では、有事の際に県外・国外からの旅行客らに観光などの自粛要請をかけ、宿泊施設は全室空室という状況を前提としている。

 沖縄・先島諸島から避難する住民約11万人のうち、4割にあたる約4万7千人を受け入れる福岡県。宿泊業界などにアンケートや聞き取りを実施して受け入れへの協力を求めてきた。

避難者受け入れで「1泊7千円」 現状とのギャップ

 県内のホテル支配人は「受け入れ可能」と答えたが、実際に旅行客が自粛して空室が生まれるのかは疑問だという。さらに、九州は「平時」という想定についても「お客がゼロより入った方がいいが、有事は戦争が起きている状態だと思う。九州は無関係でいられるのか」と首をかしげる。従業員の安全なども考えると、「協力を約束できる人はいないのでは」と語った。

 受け入れ条件も課題の一つとして浮かび上がる。避難先の宿泊施設には災害救助法に基づいて1泊3食付きで7千円が国費から支払われる。しかし、同県中心部のホテル関係者によると、インバウンドの回復を受けた価格相場は朝食付きで2万円前後で、「協力はしたいが、安すぎる。条件提示がないと進めにくい」。

 今年度は「初期的」な計画として1カ月の滞在を想定し、新年度から長期避難の想定に移る。その間の食料や日用品の提供から健康管理、教育や就労の場の確保まで、国が求める項目は多岐にわたり、その対応は自治体にとって難題だ。

運転手不足のバス業界 自治体も困惑

 避難者の輸送面でも難しさを指摘する声が相次いだ。計画では約11万人を6日間で福岡空港(福岡市)と鹿児島空港(鹿児島県霧島市)に空路で運び、そこから各県に陸路で移動させる想定。主な手段は各県が用意するバスだが、有事の際に運転手を確保することのハードルは高い。日本バス協会によると、2023年度時点で不足している運転手は全国で約1万人。今後も増える見込みだといい、慢性的な人手不足の中で有事に対応できるかは見通せていない。

 「鹿児島の貸し切りバスで2…

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