兵庫県芦屋市長に高島崚輔氏(27)が就任し、1日で1年となった。史上最年少市長は、芦屋のまちをどう変えていくのか。これまでの成果と今後の展望を聞いた。
――最も力を注いだことは
対話を中心としたまちづくりを進めるため、とにかく市役所の外に出ました。参加した催しは300以上。市内8カ所の集会所で開いた対話集会には延べ188人の市民が参加してくれました。
市民の声を直接聞いて政策に反映できるのは、暮らしに一番近い基礎自治体ならでは。地に足のついた政策を組むことができたと思います。
――実際に市民の声を政策に反映させられた例はありますか
ある対話集会では、不登校の経験がある高校生の話を聞くことができました。「相談したかったけど、先生は忙しそうで話しかけられなかった」という言葉は重いものでした。
教職員の働き方改革の必要性をより一層感じ、子どもの心のケアの大切さも痛感しました。
「PEACE(ピース)サポーター」の全市立小中学校配置といった施策も、そうした声を反映させたもの。教職をめざす学生や子育ての終わった地域の大人が、子どもたちの声に耳を傾ける。学びとのつながりが途切れないよう寄り添っていけたらと思います。
――教育改革の準備が進む一方で、市立小では児童がいじめで転校を余儀なくされるという事案がありました
学びの場の確保は教育施策の基盤であり、ここがぐらついていては教育改革どころではない。市教委だけの問題とせず、市全体でいじめ問題と向き合っていきます。
――具体的な対策は
小5~中3を対象とした弁護士によるいじめ防止授業、アプリを使った「心の健康調査」などの事業を今年度当初予算に盛り込みました。なかでも「教育相談コーディネーター」の育成・配置は重要な施策です。
深刻化したいじめ問題を調べてみると、学校や先生が問題を抱え込んでしまったケースが多い。一人で抱え込ませず、早めに市教委に相談、共有できる体制を整えます。
そのハブ(つなぎ役)となるのが教育相談コーディネーター。なり手は教頭や生徒指導の担当教諭を想定し、専門家の助言を得ながら育成を進めます。
――教育改革の司令塔役でもある教育委員人事は議会で不同意となりました。議会への説明は十分だったのでしょうか
残念ながら議会の理解を得られませんでしたが、議員への説明において特段手を抜いたということはありません。
ただ、議会に限らず庁内にも独特な作法というか呼吸というか、そういうものがあるということを、この1年で学びました。今後はそれを踏まえつつ、しっかりとコミュニケーションをとっていきたいと思います。
――能登半島地震では多くの犠牲者がでました。将来起きるであろう南海トラフ巨大地震への対策は
芦屋市は1月4日に先遣隊として職員3人を派遣して以来、消防職員や教職員を含む計16人を派遣してきました。
派遣した職員からは、避難所の寒さが、被災者の大きな負担になっていたと報告を受けました。
本市としては、災害時に避難所となる学校体育館の空調整備を急ぐとともに、防災行政無線の更新にあわせて防災情報システムを新たに導入します。
このシステムは大規模災害時の情報収集力を強化するのと同時に、SNSとの連携で市民への情報伝達力も強化するものです。
市民の命や財産を守るのは行政にとって最大の責務です。来年は阪神・淡路大震災から30年。私を含め震災を知らない世代が増えるなか、あの日の教訓を生かし、災害に強い芦屋をつくっていきたいと思います。(聞き手・真常法彦)