歌人の藤原俊成(しゅんぜい)、定家(ていか)親子の流れをくむ歌道の冷泉家(京都市上京区)に新しい土蔵「北の大蔵」が完成し、5日に竣工(しゅんこう)式があった。「和歌の家」の膨大な文化財を守り継ぐための収蔵庫として使われる。
冷泉家には数万点の文書類が伝わり、御文庫(おぶんこ)と呼ばれる土蔵で国宝の古今和歌集や定家の日記「明月記」などを保管している。
もともとは八つの蔵があったが戦後に三つが朽ちた。代わりのプレハブ倉庫も2018年の台風で被害に遭い、20年から北の大蔵の建設を始めた。東西14メートルの2階建てで、通常の蔵の2倍の大きさという。建設費は約2億円。国などの補助はなく、朝日新聞文化財団の助成を受け、寄付も募った。
冷泉家の家宝は土蔵に収められてきた。京都に大きな被害をもたらした江戸時代の天明の大火(1788年)にも土蔵は耐えた。北の大蔵も伝統的な技法を用いた土蔵だ。
冷泉家時雨(しぐれ)亭文庫の冷泉為人(ためひと)理事長は「土蔵にこだわりました。蔵が取り巻いているのが昔の冷泉の家のたたずまいです」と話した。