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 公園や河川敷に建てた紅(あか)テントが代名詞の劇団唐組が、今年も各地を巡る。昨年5月に座長の唐十郎を亡くしてから、初めての旅公演だ。上演する「紙芝居の絵の町で」には、唐の原風景が投影されている。今も座長「代行」を名乗る久保井研に4月、最初の公演地・神戸で話を聞いた。

 この旅は「唐さんを見つめ直し、唯一無二の上演形態を続けるという我々の意思表示だ」。そう久保井は話す。2012年に唐がケガをして以降、劇団を切り盛りしてきた。

写真・図版
劇団唐組の座長代行、久保井研。神戸公演の千秋楽から一夜明けて、隣では劇団員たちが紅テントの片付けを進めていた=2025年4月21日、神戸市、富岡万葉撮影

 実は、劇団活動は「唐さんが亡くなるまでだろうなと思っていた」と言う。でも「亡くなったら亡くなったで、これで終わっちゃうのか、と」。周囲の後押しを受けて続けることを選んだ。「こいつらが続けてくれるならですけどね」と、周りにいる劇団員たちに柔和な目を向ける。

 この作品は06年に唐の演出で初演された。使い捨てコンタクトレンズのセールスマンが固執する紙芝居の絵とその謎を巡り、登場人物の妄想が連鎖し、物語と現実が交差していく様を描く。今回は、唐の演出を元に久保井が演出する。

 知らないうちに犯罪の片棒を…

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