夢洲から
大阪・関西万博のアルジェリア館の展示の終盤で、壁に大きくこう書かれている。
「アルジェリアは国ではなく、大陸です」
同国の面積はアフリカ最大。サハラ砂漠から地中海まで気候や地形は変化に富み、多様なルーツの約4700万人が暮らす。学生時代にアラビア語圏に留学していた私は、その広大さを表しているのだろうと考えた。
それにしても「国ではなく」「大陸です」とずばり書かれると、その意味を確認したくなる。
日本人スタッフに聞くと、他の来場者からも「意味がわからない」と言われることがあるという。
一方でメディアマネージャーのムスタファ・キャメル・ラスタブさん(42)は「勘違いは起こらないはずだ」と、首をかしげる。アラビア語でこう書けば、アルジェリア人なら「まるで大陸のように広い」と捉えるといい、やはり「広く、多様な側面があるとのメッセージを詰めた」という。
言葉は文化。翻訳の正しさだけではなく、地域によっても感じ方が変わるから奥が深い。館内でも、日本人スタッフが表現の変更を提案し、アルジェリア人スタッフが不思議に思う状況が続いているという。
私が話を聞いた日本人スタッフの一人も「変えた方が良いと思うんですけどね」と言っていたが、取材の終わりにふと漏らした。「この表現だから関心を持って取材してくれたんですよね。そのままにしておくのも良いかな」
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。