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母子の命を守ろうと内密出産などに取り組む=2025年3月1日、熊本市西区島崎6丁目、伊藤隆太郎撮影

 親が育てられない子を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」に預けられた子や、病院の担当者だけに身元を明かす「内密出産」で生まれた子の「出自を知る権利」をどう保障するのか。専門家による検討会が21日、報告書を公表した。子の出自情報は国の専門機関で一元的に保存することが望ましいとして、国に法制化の検討を求めた。近く、こども家庭庁に提出する。

 検討会は2023年5月、熊本市の慈恵病院と同市が共同設置した。

 新生児の殺害や遺棄、孤立出産をなくそうと、同院はこうのとりのゆりかごと内密出産に取り組む。ゆりかごは07年の開設から23年度までに179人が預け入れられ、内密出産では21年12月~25年2月末に43人が生まれた。病院には、成長した子や養親から出自に関する問い合わせが寄せられている。

 子どもが自身のルーツや出生の経緯を知る権利は、国連の「子どもの権利条約」にも明記されている。だが、日本に保障する法律はなく、出自情報とは何を指すのか、明確な定義はない。

 検討会では、こうした現状を踏まえ、出自とは何か、親や女性の「匿名性」を守りながら、子どもの「知りたい」という思いにどう応えるのか、専門家らが議論を続けてきた。

 報告書は、最優先されるべきは「妊婦および子の生命・健康の確保」とした。そのうえで出自情報を①父母に関する情報②子どもに関する情報、に分けて整理した。

 ①では、父母の名前や住所、生年月日などの、個人の特定につながる「身元情報」と、血液型やゆりかごや内密出産を選択した理由、成育歴など「身元の特定につながらない情報」にわけて保存することとした。身元情報の開示には父母の同意が必要、とした。

 ②では、生年月日や出生日時などの「基礎情報」と、それ以外の父母の健康状態や、親が子へ伝えたいことなどにわけて整理。開示にはいずれも父母の同意は不要、とした。

 父母の身元情報は医療機関、それ以外は医療機関と児童相談所などが「永年で保存する」としている。

 子が出自を知る過程の重要性…

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