衆院で少数与党になった石破政権にとって、夏の参院選は命運をかけた戦いになる。結果次第では連立の組み替えや退陣に追い込まれかねないからだ。
足元の状況は厳しい。自民党派閥の裏金問題で失った国民からの信頼の回復にはほど遠く、石破茂首相自身の商品券配布が積み重なった。それでも、問題の実態解明や党の金権体質に厳しく向き合おうとはしない。固い大きな塊となった国民の不信感を前に、政権浮揚の兆しは見えない。
3月の党大会で首相は、こう語っていた。「丁寧に弱い人、苦しい人、つらい人、そういう人たちのお声を聞き、国民に最も近い自由民主党。それが信頼を回復する唯一の手立てであると信じている」「国民の怒り、悲しみ、喜び、苦しみ、それを一番知っているのが自由民主党である」
しかし、こうした「宣言」とは相いれない動きが続いている。
政府・与党は、物価高や「トランプ関税」を理由に、国民への一律の現金給付を検討したが、さっそく「選挙対策のバラマキ」という旧来型の思考から脱していない、と多くの国民から見透かされた。輸出産業への打撃から企業業績の悪化への危機感が高まり、自由貿易を基本としてきた世界経済が減速しかねない難局にあるのは確かだが、夏の参院選に向けたアピール材料にしようとの政治的思惑が先行した打ち出しだったのは明らかだろう。
「国民の怒り、悲しみ」を生…